「Wet Hot American Summer: First Day Of Camp」鑑賞

first-day-of-camp.0
ネットフリックスの新作シリーズ。

日本では公開されてないし知名度ゼロ(俺も未見)ですが、2001年にアメリカで公開された「Wet Hot American Summer」というコメディ映画がありまして、サマーキャンプを舞台にした80年代のティーン映画のパロディをやってるのですよ(なお予算の都合で撮影は冬にやったらしい)。評論家にはウケなくてロジャー・イバートなどには酷評されたらしいが、監督のデビッド・ウェインをはじめとする「THE STATE」のメンバーたちや、ポール・ラッドにエイミー・ポーラー、クリストファー・メローニ、デビッド・ハイド・ピアース、ブラッドリー・クーパー、ジャニーン・ギャロファロといった、(主に当時は無名だった)有名俳優がたくさん出ていることでカルト的な人気を博している作品なのです。この人気を受け、当時のキャストをそのまま使って(みんな老けてしまっているのだが)プリクエルを撮影するという話は以前からあったのだが、それがついに製作されたというわけ。

当時のキャストは殆ど戻ってきていて、みんな若作りのメイクをしてティーンエイジャーの役を演じてるので、不気味といえば不気味だな。さらに今回はジェーソン・シュワルツマンやジョン・スラッタリー、クリステン・ウィッグ、クリス・パイン(!)といったキャストも出演するようで、無駄に豪華というか何というか。よくこれだけの役者を集められたよな。

内容はキャンプを舞台にしたスケッチコメディみたいな感じで、下ネタを中心に若者たちのシュールなドタバタが繰り広げられるといった内容。キャンプ場のそばに核廃棄物が不法投棄されてるとか、あとにつながるプロットみたいなのもあるのだけど全話観てないので何とも言えません。

登場人物がバカやってるんだけど誰もそれにツッコまない系のコメディ(ウィル・ファレルがよくやってるやつ)って個人的にはあまり好きなタイプのコメディではないけど、さすがにキャストが豪華なので「あ、彼があんな役やってるよ!」と気付きながら観るのだけでも楽しめるかと。

「ベルファスト71」鑑賞

'71
カソリックとプロテスタント系の住民の衝突(いわゆる「The Troubles」)が激化していた1971年の北アイルランドはベルファストを舞台にしたサスペンス。

若くしてイギリス陸軍に入隊したゲイリーは、初の勤務地としてベルファストに派遣される。そこでイギリスに抵抗しているカソリック系の住民の抑圧にあたるのだが、経験の浅い上長が部隊を率いていたこともあり、住人たちとの小競り合いのなかでゲイリーは部隊に置き去りにされ、さらにもう一人の兵士が住民によって射殺されてしまう。こうして身の危険を察したゲイリーは必死に逃亡を続けるのだが、彼を狙う者たちが追いかけてきて…というストーリー。

まあ北アイルランドが舞台の「ブラックホーク・ダウン」みたいなもの?戦地における兵士の必死のサバイバルを描いているのだが、「ブラックホーク」同様に、主人公を狙う住人たちが冷酷な野蛮人みたいに描写されてるのがどうも気になるのよな。彼らはゴミ缶のフタを打ち鳴らし、殺人も厭わない人間として映し出されるわけだが、彼らの土地であったところにズカズカ入植してきたのはイギリス人であるわけだし、この扱いにはどうも腑に落ちないところがあったよ。いちおう冒頭でイギリス軍がカソリック系の住人に非人道的な恫喝を行なうシーンがあったり、重傷を負ったゲイリーが住人に助けてもらう展開もあったりするものの、政治的なバックグラウンドがある映画の割には凡庸なサスペンスに仕上がっていると思わずにはいられない。これを観た人は、カソリック側からの視点でイギリス軍の横暴を描いた、ポール・グリーングラスの「ブラディ・サンデー」も観といたほうが良いかと。

そして単なるサスペンス映画として出来が良いかというと、そうでもなく。主人公のゲイリー(演じるのは皮肉にもアイルランド系のジャック・オコンネル)が終始あたふたしていて、どうも頼りないんだよな。ニーソン爺さんばりの孤軍奮闘をしろとは言わないが、もうちょっと機知を働かせて身を守っても良かったのではないかと。むしろ彼の運命は周囲の住人たちに委ねられているわけだが、イギリス軍の工作員としてイギリス寄りの住人たちと内通している人物が出てきたりして、変に難しい政治ゲームが主人公と関係ないところで繰り広げられたりしていた。

当時の北アイルランドでの衝突って、興味深いネタになりそうな話はいろいろあると思うのだが、これは全体的にパッとしない作品であったよ。

「IT FOLLOWS」鑑賞

it-follows
200万ドルというごく低予算ながら高い評価を得たホラー。日本でも配給会社が決まってるので劇場公開かDVD発売すると思うが、これ話のプロットがそのままネタバレにつながるので、前知識なしで作品を楽しみたい人は以下の文章を読むのをお控えください。

いいね?

ジェイはデトロイトに住む多感な女子大生で、少し謎めいたヒューという男性とデートするようになっていた。やがてジェイとヒューは彼の車のなかでセックスをするものの、クロロホルムによって彼女は昏睡させられてしまう。目覚めた彼女に、自分の「呪い」について説明するヒュー。それはセックスによって移る(拡散ではなく引き継がれる)ものであり、

・呪いがかかっている人物には、「それ」が静かに追いかけてくる。
・「それ」は誰かしらの人間の姿をしている(知人のときもある)が、その姿は呪われている人物にしか見えない。
・「それ」につかまった人は死んでしまう。
・呪われた人が「それ」によって殺された場合、「それ」はその1つ前に呪いがかかっていた人を再び追いかける。

というもの。呪いを移したことを詫びつつ、ジェイにひたすら逃げるように伝えて姿を消すヒュー。そして自宅にもどったジェイは、やがて自分をゆっくりと追いかけてくる何者かの姿を目にするようになり…というストーリー。

上記の「それ」の説明だけ聞くとJホラーの設定みたいで陳腐に聞こえるかもしれないが、演出と音楽が巧みなので、背後から見知らぬ存在が近づいてくる…というシーンがすんげぇぇぇ怖く描かれているわけですよ。引きのショットや360度回転のショットを多用して、主人公たちを何者かが覗いているかのような雰囲気を醸し出しているほか、ジョン・カーペンターを多分にリスペクトした(これは監督のデビッド・ロバート・ミッチェルが認めている)電子音楽が全編に鳴り響いていて、「それ」が登場した途端にシンセ音がデェェェと鳴ったりするのが怖いのなんのって。

「それ」は目に見えないものの物理的には触れることのできる存在であり、その対処方法や逃げ方にはいろいろツッコミも入れたくなるものの、いいんだよ細けぇことは!またストーリーの時代設定も意図的に曖昧なものにしてあるので、あまりとやかく言わないように。

「それ」が性行為感染症のメタファーであることは容易に推測できるが(チャールズ・バーンズの「ブラック・ホール」を連想した)、それについて監督は深くは語っていない。むしろ死を目前にして絶望し、それを克服しようとする若者の心境がうまく描かれているかと。ドストエフスキーやT.S.エリオットの引用を持ち出してくるのは青臭いと思ったけどね。また「それ」が身にまとう人の姿や、劇中に出てくる写真などにもいろいろ意味がありそうで、今後も長きにわたって解釈が論じられる作品になるかと。「ドニー・ダーコ」を最初に観たときと同じような印象を受けたな。

低予算ゆえ有名な俳優などは出演していないが、主演のマイカ・モンローは「インデペンデンス・デイ」の続編に出演するそうでスターの仲間入りするんじゃないかと。あと彼女に横恋慕するオクテの少年を演じるキーア・ギルクリストが良かったな。この作品のヒットを受けて早くも続編製作の話がでているそうだけど、「それ」の秘密が変に明かされたりするのは野暮なんじゃないかとも思う。

というわけでみんな、死にたくなかったらセックスするなよ!俺もしないからな!

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」鑑賞

11170313_922916591107808_3937476716611035439_o
ネタバレにならないように感想をざっと:

・「新起動」といいつつも初代「ターミネーター」(あとちょっと「T2」)のストーリーをかなり踏まえた内容になっていて、あれ観てないと話がよく分からないかも。そこらへん不親切といえば不親切。

・タイムトラベルもので何本も続編を作れば当然ながら時代設定が破綻してくるわけで、複数の時間軸が存在するのなら過去に戻って歴史を修正する意味がないんじゃね?改変されるのは自分がいるのとは別の時間軸になるということで。まあそれにツッコむのは野暮でしょうが。

・ジョン・コナーの正体とかをトレーラー(しかも本国の)でしっかりとバラしてくれたおかげで、話の後半まではそれなりに予定調和で話が進む。これに関連したわけではないだろうが、未来の展開を知っているキャラクターが多いのため、なんか話の展開がちょっと安直なところがあるんだよな。

・外側の皮膚は人間と同様に老けるんだそうな。あーそうですか。

・エミリア・クラークが場面によってはリンダ・ハミルトンに似てるように見えるのは意外だった。一方でジェイ・コートニーのアクション顔はニコラス・ケイジに似てきた。

・「ドクター・フー」ファンの諸君、マット・スミスの活躍を期待してはいけないよ。

・病院から逃走するときはクツを履こうね。3人で車に乗るときはバスよりも小さい車に乗ろうね。

・エンドクレジット途中に短い映像シーンあり。でもストーリーの大きな謎が最後まで説明されない、というか放棄されている。

・シュワちゃんは毎度ながらシュワちゃんだし、アクションもさほど悪いわけではないものの、じゃあ作る必要があった映画かというとちょと悩んでしまう。タイムトラベルの要素さえもなかった「ターミネーター4」に比べるとずっとマシだけどね。

・アメリカでの興行成績がパッとしてないので続編は当分ないだろ…と思いきや、IMDB情報によると2019年に権利がジェームズ・キャメロンに戻ってしまうため、それまでにもう2本製作する話が進んでるのだとか?シュワちゃん年齢大丈夫か?俺は初代しか認めてない原理主義者ですが(「T2」も余計だったと思う)、タイムトラベルものの続編を作り続けるのはやはり無理があるだろうと思わずにはいられないのです。

「Benvenuto Cellini」鑑賞

ENO-Benvenuto-Cellini-Jof-481439
ファウストの劫罰」に続いてテリー・ギリアムがイングリッシュ・ナショナル・オペラと組んで演出した、ベルリオーズの「ベンヴェヌート・チェッリーニ」がアルテによって映像が全編公開されていた。。ただしこちらはオランダのナショナル・オペラが演じたものみたい。

セリフ(歌)がみんなフランス語だし、字幕もないので仕方なしに対訳サイトをちらちら眺めながら鑑賞。結局話がよく分からなかったな。彫刻家のベンヴェヌート・チェッリーニが教皇に命じられて彫像を建造するはずが、町で飲んだくれて愛しの女性テレーザと乳繰り合ってて…というような話?
848fcb10-0df6-4230-86ea-0041686785cd-620x372

前回の「ファウスト」は舞台設定をナチス政権下へと大胆に移し、ファウストに対するメフィストフェレスの誘惑とナチスの台頭がマッチしてすごく緊迫感のある演出になっていたが、今回はスラップスティック・コメディみたいになっていたな。ドタバタ動きながらもしっかりと声を出して歌う出演者たちは本当に素晴らしいものの、広場の道化師などはオペラというよりもシルク・ドゥ・ソレイユのようであった。

個人的に「ファウスト」はギリアムがここ20年くらいのあいだに手がけた作品のなかでもベストに入るものだと思っていて、最後のファウストの地獄堕ちの演出などは息をのむくらいに素晴らしかったけど、今回の出来はあれほどではないかな。つうか幕間をカットしても3時間ある映像を字幕無しでずっと観るのがしんどくて、ちょっとスキップしたのであまり大きなことは言えませんが。

前作ほどではないにしろ登場人物のファッションとかセットの演出はギリアムならではのものだし、ファンならチェックしても損はないだろう。映像もしばらくは公開されてるみたいだし。なお映像の冒頭にNHKの名前が出てくるのだけど、協賛とかしてるのかな?いずれBSなどで日本でも放送されることに期待。