「The Honourable Woman」鑑賞


イスラエルとパレスチナの紛争をテーマにしたBBCのミニシリーズ。実にタイムリーなネタを…と思ったがあそこの地域のネタは50年くらい常にタイムリーなんだよな。

ネッサ・スタインは9歳のときに、イスラエルへ武器を販売していた父を目の前で暗殺された経験を持つ女性。父親の企業は兄(弟?)のエフラが引き継いでいたが、数年前に突如としてエフラが退任し、それからネッサが企業のトップとして、中東へ和平をもたらすべく貢献を続けていた。しかしパレスチナの取引先の人物が謎の死を遂げ、彼女の周りにはMI6をはじめとする怪しげな連中が現われるようになる。そしてネッサ自身も、公表できない暗い秘密を抱えていた…というようなプロット。

「THE SHADOW LINE」のヒューゴー・ブリックが脚本と監督を務めており、あの番組と同様に臨場感はたっぷりあるものの話の展開が遅いような…登場人物も多くて話を追うのがちょっと大変だったぞ。あの地域の紛争についても最低限の知識は持って観たほうが良いでしょう。

ネッサを演じるのはマギー・ジレンホール。イギリス訛りをとてもいい感じでマスターしていますな。暗い過去を抱え、大きな陰謀のなかで翻弄される主人公を身体を張って演じている。あとは彼女を探る定年前のMI6のエージェントをスティーブン・レイが演じていた。

非常にセンシティブなテーマを使っているだけに公平にレビューされるのも難しいようで、imdbのコメントでは例によって「これはイスラエルのプロパガンダだ!」なんて書かれてたし、イギリスのレビューでも「ヒューゴー・ブリックは(イスラエルとパレスチナの)どっち寄りなのか?」というのが論じられていた。とはいえ概ね評判は良いようだし、アメリカでも放送が始まったので、これからもっと話題になる作品かもしれない。

「MANHATTAN」鑑賞


ウディ・アレンの同名映画のテレビドラマ…では当然なくて、原爆を開発した「マンハッタン計画」に関わった人々を描いたWGNの新作シリーズ。登場するキャラは殆どが架空の人物になるのかな?

舞台は1943年。第二次世界大戦の戦火が多くの犠牲者を出しているなか、ドイツよりも先に原子爆弾を完成させるためにアメリカ政府はロバート・オッペンハイマーの指揮の下、ニューメキシコのロス・アラモスに優秀な物理学者たちを招集して「マンハッタン計画」を立ち上げる。しかし砂漠の中の村という劣悪な条件のなかで働かされる科学者たちのストレスは、その家族たちにも影響を及ぼすようになり…というプロット。

副大統領さえも知らないという極秘のプロジェクトに関わる科学者たちが、当然その仕事の内容を妻たちにも明かせず、家族関係がどんどんギクシャクしてくという設定が面白いかも。また計画内では2つのチームが独自に原爆を開発しており、その駆け引きが話にスリルを加えている。あとは計画の秘密がどこかから漏れているらしいとか、科学者やロス・アラモスの土壌が放射能で汚染されているといった伏線が張られているのだけど、今後の展開はどうなっていくのだろう。

なお結果的に原爆が投下される日本についての言及は殆どなし。このシリーズのメイキング番組みたいなものも観たのだけど、当時の科学者たちはみんなドイツ相手に原爆を作ってるのだと思い込んでいて、日本に投下されたことを知ってショックを受けた人が多かったのだとか。

主役の科学者を演じるのがジョン・ベンジャミン・ヒッキーで、その妻をオリヴィア・ウィリアムスが演じている。彼女ってなんか恵まれない人妻の役ばかり演じているような。あと音楽を担当してるヨンシー&アレックスって、シガー・ロスの人?

日本人としてはちょっと微妙な気持ちになる題材だが、映像も美しくてよく出来た作品。WGNのシリーズとしてはこないだの「SALEM」よりもずっと面白いかと。

「SATISFACTION」鑑賞


USAネットワークの新作シリーズ。

ニールは投資信託の会社でバリバリ働くビジネスマンで、プール付きの邸宅に住み、若くして結婚した妻のグレースとの間には16歳になる娘のアニカもいて、それなりに成功した人生を送っていたものの、何かしら満たされない気分を感じるようになっていた。そして大口の顧客を得るために出張中、飛行機で長らく待たされたことから彼は突然ブチ切れ、空港でひと騒ぎ起こしてしまう。それがもとで会社でもブチ切れた彼は会社を辞め、家に帰るのだがそこでグレースが男娼と不倫しているさまを目撃してしまう。怒った彼は男娼を追いかけ、彼の携帯電話を手に入れる。そしてその電話に「注文」がかかってくることを知った彼は、自分も男娼のふりをして女性たちに会いにいくのだが…という話。

人生が嫌になったニールが、禅に興味をもって仏僧のもとを訪れたりするのがアメリカっぽいのかな?仕事中心の夫に不満を抱いてグレースが不倫に走ったことも彼女の視点できちんと描かれていた。一方ではアニカが教師の不倫を告発した歌を学校で歌って退学になるなど、家庭が崩壊する寸前までいって逆に皆が結束し、それでもニールが妻のことを疑わしく思っているなどといった家族の描写が、絶妙なバランスで描かれている。

これから先はニールが男娼を続けていくのか、グレースが不倫を続けていくのか、それともグレースの不倫相手が復讐をしてくるのか、どう話がつながっていくのか全く分からないのですが(コメディになるという説もあり)、第1話はCM入りで90分の長尺ということもあり、良く出来たTVムービーを観ているようで意外と面白かった。主人公が男娼になる番組と言えばHBOの「HUNG」があったけど、むしろ妻の不倫に悩む夫という意味では映画の「ファミリー・ツリー」に似てたかな。

ニールを演じるのは「GLADES」のマット・パスモア。真面目な役もちゃんとできるじゃん!そしてグレース役は「アイアンマン3」のステファニー・ショスタク。また最近のTVシリーズの常としてアトランタで撮影をやってます。

USAネットワークの番組としては毛色が違うのであまり長続きしないと思うけど、第一話の出来が良かったことはここに記しておく。

「THE ZERO THEOREM」鑑賞


テリー・ギリアム御大の4〜5年ぶりの新作。イギリスではもうDVD出てますが、日本では秋くらいに公開ということで、ネタバレしないように感想をざっと:

・舞台は明言されないけどおそらく近未来。主人公のコーエン・レスは、とある電話を待ち続けているために在宅勤務を上司に希望。謎めいた会社社長に会ったのちに彼は在宅勤務が認められ、「ゼロは100%」という謎の定理「ゼロ・セオレム」を解明するように命じられる。しかしコンスタントにデータのアップロードが求められるその業務にコーエンは耐えられなくなり、やがてブチ切れることに…というようなプロット。

・「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせる近未来のセットのデザインがね、金かかってなさそうなのに独創的で素晴らしいのですよ。ペダルを漕ぐ職場とか、仮想現実スーツのデザインとか。こういうのやらせるとギリアムの右に出る人はいないですね。

・なお「ブラジル」と似ていることろが沢山あって、主人公は妄想(仮想現実)に逃避してるし、彼の上司を演じるデヴィッド・シューリスは話し方とかがまんまマイケル・ペイリン。デブとノッポの「輸送人」コンビは「ブラジル」の修理人コンビみたいで、ついでに言うなら「マインクラフト」みたいな定理解明用のプログラムも「ブラジル」の地下迷宮に似ているな。もちろんダクトチューブも出てくるぞ。

・また自分なりの信念をもって突き進み、身を破滅にさらす主人公というのは80年代〜90年代のギリアム作品に通じてますね。そういう意味では(00年代の迷走期を抜けて)ギリアムが戻ってきた!と喜びたくはなる一方で、過去のスタイルに戻ってしまったのかなという気にもなる。監視カメラやオンラインセックスというネタは非常に現代的で、時代がギリアムに追いついてしまったのかなあとも思う。

・出演者の演技はどれも素晴らしくて、クリストフ・ヴァルツが眉毛も剃ったスキンヘッドになって主人公を熱演。ヒロインはメラニー・ティエリー。あとはマット・デーモンが出てたり、ティルダ・スウィントンがラップを披露してたりします。ベン・ウィショーなんかもちょっと出てるよ。少年プログラマーを演じたルーカス・ヘッジスの演技が特に良かった。

・なお主人公が訳あって自分のことを複数形で呼んでいて(「I」でなく「We」)、そこらへん日本語訳は面倒くさそう。さらに主人公が務める会社の名前が「MANCOM」というのも、日本語字幕にしたらちょっと恥ずかしそうだな。

・話の結末がちょっと弱い気もするが(レディオヘッドねえ…)、ギリアムのファンなら十分楽しめる作品であった。例によって配給会社がなかなか見つからないらしく、カナダでは劇場公開されない憂き目にあっているそうなので、日本で公開されたときは金を払って観に行きましょうや。

「UNDER THE SKIN」鑑賞


日本では「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」の題で10月に公開だそうな。

何もない宇宙から何もないスコットランドにやってきた、スカーレット・ヨハンソン型の宇宙人。彼女は死んだ少女の服を身にまとい、バンを乗り回しながら道を尋ねるふりをして通りの男性たちに声をかけて車内に誘う。彼女とねんごろな関係になれると期待した男たちはいそいそと彼女に従うのですが、彼女の家で服を脱ぎだしたところで暗闇にズブズブと沈んでいき、中身を吸われて哀れ皮だけの存在に…というようなストーリー。

お色気宇宙人に男が餌食になる「スペース・バンパイア」とか「スピーシーズ」を思わせるような設定ですが、中身は全く似てなくて、何の説明もなく断片化された話が続く、コテコテのアートフィルムになっている。70年代のアートなSF映画、特にニコラス・ローグの「地球に落ちてきた男 」に雰囲気は似ているかな。

不安をかきたてるような音楽にのせて描かれる、スコットランドの夜景とか男たちが餌食になるシーンはとても美しくて、批評家たちに絶賛されたのは分かるのですが、じゃあ観てて面白いかというとそうでもなく…。正直なところ結構しんどかったな。

でも寡黙な宇宙人の役に、ビッチな雰囲気のスカヨハはよく似合っている。あとはライダースーツを着た、セブン上司のような宇宙人も出てくるのですが、演技力よりもバイクのスキルが求められたということでプロのレーサーが演じてるそうな。またスカヨハに車で誘われる男性たちはみんな素人で、実際に声をかけられるシーンを隠しカメラで撮影していたのだとか。でも普通だったら「あなた、『アベンジャーズ』に出てませんでした?」とか言われそうなものなんだがなあ。彼らスッポンポンになって頑張ってます。顔に障害がある男性も、メークではなく実際にそういう人がキャスティングされたのだとか。

例によってメディアでは「スカヨハがフルヌードに初挑戦!」なんて煽られてますが、どのくらい裸が拝めるのかはここでは書きません。スカヨハの裸を期待した男たちが哀れな目に遭う映画に対して、スカヨハの裸を期待して映画館にやってきた男たちが哀れな目に遭うというメタな展開が繰り広げられるのではないかと、今から勝手に期待しておきます。