「THOSE WHO KILL」鑑賞


A&Eの新作刑事ドラマで、デンマークの作品のリメーク。なんか北欧の人たちって「キリング」とか「ザ・ブリッジ」とか陰惨な刑事ドラマばかり作ってるような気がするのですが、暗くて寒いところに住んでるとそういう気性になるのでしょうか。

ピッツバーグ市警の警部であるキャサリン・ジェンセンは、工場で発見された変死体がシリアルキラーの犠牲者であることを見抜き、犯人を捕まえるために犯罪心理学者のトーマス・シェイファーの手を借りることにする。犯人の手がかりをつかんで新たな犠牲者が出るのを防いだ2人だったが、犯人には逃走され、さらにその後にはキャサリンが捕まってしまい…というような内容。

まあ典型的な猟奇犯罪ものかな…ケーブル局の番組なので描写はちょっとグロいです。犯人の猟奇性というよりも主役2人のメンヘラぶりに重きが置かれているようで、トーマスは事件解決を忘れて犯罪者の心理に没頭してしまうし、キャサリンは過去のトラウマを抱えているために振る舞いがちょっとサイコさんぽかったりする。今後は2人の過去が徐々に明かされていく展開になるのかな?心にトラウマを抱えた者がシリアルキラーの心情を理解できる、というのが作品のテーマなんだろうけど、その割にはキャサリンはあまり敏腕ではないような…犯人に2〜3回くらい裏をかかれていたぞ。

キャサリンを演じるのがクロエ・セヴィニー。だんだん彼女は体格が立派になってってますね。トーマスを演じるのがイギリス人のジェームス・ダーシーで、彼ってポール・マッガンに似てるな。あとはブルース・デイビソンが今後のエピソードに出てくるみたい。

今後の展開次第では面白くなるかもしれないが、第1話を観た限りでは他の猟奇もののTVシリーズと大差ないかもしれない。地上波ネットワークでも「ハンニバル」が高い評価を得ていることを考えると、もうちょっと頑張らないといけないと思う。

「Nemo: The Roses of Berlin」読了


『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』最新作だよ。前作「Heart of Ice」から思ったよりも早いタイミングで続編が出てきたな。主人公は前作と同じジャンニ・ダカール。この後はネタバレ注意な。

舞台は1941年。第二次世界大戦の戦火が世界を揺るがすなか、ジャンニの娘は15歳にして征服者ロビュールのもとへ嫁ぎ、ジャンニは夫のブロードアロー・ジャックとともに海賊業に専念して、アデノイド・ヒンケル率いるトメニア(「Black Dossier」にも出てきたナチスのアナローグね)の船を襲撃していた。しかしそんな彼女のもとに、ロビュールとジャンニの娘が乗った飛行船「The Terror」がトメニア軍によって撃墜され、2人が捕獲されたという知らせが入る。愛する娘たちを救出するために、夫と2人で急いでベルリンに潜入するジャンニ。しかしそれはヒンケルたちが仕掛けた罠であり、彼女たちを待ち受けていたのはドイツ版「リーグ」こと「黄昏の英雄たち」の残党たちであった…という展開。

人外魔境が舞台だった前作とは一転して、今回は人でごったがえすベルリンでの冒険活劇となっている。「黄昏の英雄たち」は以前にも「Black Dossier」で言及されているが、そのメンバーはロボット・マリアやカリガリ博士、ドクトル・マブゼなど。また前作からの因縁の的も登場するぞ。登場人物などの元ネタは戦前のドイツ映画からとってきているものが多いかな?たぶん俺が見逃しているネタも多々あるはずなので、ここはジェス・ネヴィンズ氏あたりがまた注釈用のウェブサイトを立てることに期待しましょう。なおドイツ人のキャラクターの多くは当然ながらドイツ語で話していて、アラン・ムーア作品の常としてそれらの対訳は用意されていない。これが以前に出てきた火星語とかだったら普通に読み飛ばすのだが、ちゃんと意味のあるドイツ語が読めないというのは何か損した気分になってしまいました。

なおちょうどこれを読む前に、ムーアのやたら長いインタビューを読んでおりまして、「ムーアの作品は女性が暴行を受けるものが多い」という批判に対する反論をムーアが行なっていたりするのだが、この作品では50歳を目前にしたママさんのジャンニが同じく女性の敵たちを相手に死闘を繰り広げ、女性のパワーのようなものをひしひしと感じられる内容になっていたな。圧倒的な戦力差があるはずなのにジャンニたちが強すぎるような気もしたけど。

そして次作は1975年の南米を舞台にした「River Of Ghosts」という題名になるらしいぞ。ネモ三部作の最終巻らしいが、年代的に主人公はジャンニの娘になるのかな?あとムーアは魔術の手引書である「The Moon and Serpent Bumper Book of Magic」なる本も執筆しておりまして、こちらも面白そうなので年内にには刊行して欲しいと願っているのであります。

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」鑑賞


アレクサンダー・ペインが故郷のネブラスカを舞台に撮った新作。

半ばボケ気味の老人であるウッディは、「あなたは100万ドルが当たりました!」というチラシをもらったことから賞金をもらいにオマハから数百マイル離れたリンカーンまで行こうとする。彼の妻や息子のデビッドはそれが単なる宣伝用の文句であることを見抜くものの、ウッディは頑として譲らずに歩いてでもリンカーンに行こうとする。仕方なしにデビッドは仕事を休んで父親をリンカーンまで連れて行くことになり、途中でウッディの故郷である町ホーソーンに立ち寄って親族たちに出会うものの、ウッディが大金持ちになったという噂は町にまたたくまに広がり…といったストーリー。

全編を通してモノクロで撮影されており、ペインは「ネブラスカにお似合いでしょ!」と言ってるのだがそういう土地なのか?ネブラスカを舞台にしたロードムービーという点では同監督の「アバウト・シュミット」に通じるものがあるが、あちらはあくまでも話の中心がジャック・ニコルソンのシュミットだったのに対し、こちらは寡黙なボケ老人が主役なため中心にぽっかり穴が空き、その周りを登場人物が固めているような感じ。

そしてウッディに対して口うるさい妻、父親に迷惑している子供たち、そして欲に目がくらんだホーソーンの住人たちなどが出てくるわけだが、ホーソーンの住人たちが田舎者のグロテスクなカリカチュアにしか見えんのよね。意外と故郷に対するリスペクトというよりもファックユーが感じられる内容であった。ネブラスカの住民が実際にどういう性格なのかは知らんが、例えば前作「ファミリー・ツリー」に出てきた親族たちも金目当てで集まっていたわけだが、彼らにはそれなりの動機があることが描かれていたわけで、今回はそれが抜けている感じ。また家族の会話や故郷の人たちの話でウッディの過去がいろいろ明かされていくわけだが、それらがやけに説明調なんだよな。ペインの過去の作品だったらもうちょっと微妙なニュアンスで語られていたと思うのだけど。

ウッディを演じるブルース・ダーンはアカデミー賞候補にもなっているが、基本的に「受け」の演技なので評価しずらいかも。デビッドを演じるウィル・フォルテも同様。逆に妻役のジューン・スキッブとか町の悪役的なステーシー・キーチは憎たらしい演技をしていていい感じ。あとデビッドの兄を演じるボブ・オデンカークが時たま見せる表情が最高で、「ブレイキング・バッド」にしろ彼がこんなに演技が巧くなるとは想像もつかなかったな。

自分も老いた親を抱える身なので、デビッドの境遇にはシンパを抱きながら観たつもりなんだけどね、逆に「俺だったらこうしてるよ!」とフラストレーションを感じながら視聴する結果になってしまいました。ペインが初めて他人の脚本を起用した作品らしいけど、彼はやはり自分で脚本を書いたほうが良い作品が作れるのではないでしょうか。

ハロルド・ライミス死去

朝から訃報を聞いて落ち込む。というかもう69歳だったのか。

俺らの世代にとってはやはり「ゴーストバスターズ」のイゴン・スペングラーだよね。ほかのメンバーが奔放なアメリカンという感じだったのに対し、メガネかけて科学に打ち込むさまは日本人の多くが共感できたのではないか。最近は映画監督のイメージが強かったけど、トロントに住んでたときはSCTVの再放送をよく観ておりまして、若かりし彼がスケッチコメディを演じてるのが新鮮でありました。

俺も監督作の多くをチェックしているわけではないし、「紀元1年が、こんなんだったら!?」みたいな微妙な作品も作ってるのだけど、やはり「恋はデジャ・ブ」はホロっとする名作だよね。ビル・マーレーを使いこなせる監督としても貴重だったような(最近はウェス・アンダーソンがいるけど)。個人的にはやはり「アイス・ハーヴェスト」がすごく好きな作品で、故郷を離れたいダメ男を主人公にしたブラックユーモアとノワールのミックスが最高でした。

製作がそろそろ現実味をおびてきた「ゴーストバスターズ3」でも元気な姿を見せてくれると思ってたんだがなあ。合掌。

「ABOUT A BOY」鑑賞


ニック・ホーンビィの原作小説をヒュー・グラント主演で映画化したやつのTVシリーズ版。なんで今ごろ?という気もするけど、まあネタがなかったんでしょう。

例によって内容はアメリカナイズされていて、舞台はサンフランシスコ。大ヒットしたクリスマスソングの印税で優々としたシングルライフを謳歌していたウィルは、シングルマザーが容易に口説き落とせることに気づき、架空の息子を仕立て上げてシングルファーザーのふりをして女性に接近する。同時期に彼の隣の家にはシングルマザーのフィオナとその息子のマーカスがやったので、ウィルはマーカスに彼の息子を演じるように頼むのだが…というような内容。まあ映画版と大体同じかな。

プロデューサーにロバート・デニーロが名を連ねていて、第1話の監督はジョン・ファヴロー。主役のウィルを演じるのはデビッド・ウォルトン…って誰だっけ。隣人の口うるさいニューエイジかぶれのシングルマザーをミニー・ドライバーが演じてるのだが、あの人ってここ10年くらいはうるさいオバサンの役ばかり演じているような。あとは「デイリーショー」のアル・マドリガルが出演しているのだけど、彼って「デイリーショー」を降板するのか?

ずっと前に書いたようにニック・ホーンビィっていまいち大人になれない男性の心境を描くのが巧い作家で、俺もミックステープとか作ってたので「ハイ・フィディリティ」にはえらく共感して、好きだった女の子に文庫本を渡したらぜんぜん読んでくれなくて、えっと、えっと、何だったっけ。ああそうだ、それでこの主人公のウィルって周囲の友人がみんな結婚して子供つくって落ち着いてるなかでひとり好きなことやってるボンクラで、境遇的には自分と似てなくもないのだが、全く共感できないのよね。まだヒュー・グラントが演じてた時は寂しさを秘めたような感じがあったけど、今回は単に無責任なアメリカンというか。もうちょっと奥行きのある人物にすればよかったのに。

あと第1話が映画版のあらすじを大体なぞっているわけだが、今後の展開はどうするんだろうね?大人と少年のバディ・コメディだったら「ハーパー★ボーイズ」が既にやってるわけで。本国の評判も良くないようだし、この時期に開始される他のコメディドラマと同様に、あまり長続きはしないシリーズとなるでしょう。