「MIND GAMES」鑑賞


ABCの新作ドラマ。

前科持ちの元詐欺師であるロス・エドワーズは、双極性障害を患っているものの有能な心理学者である兄のクラークと組んで、心理操作を用いて諸々の問題を解決する会社を立ち上げる。懐疑的なクライアントに心理と人間の行動の関係について説明しようとするロスだったが、クラークの突拍子もない行動のためにうまくいかない。さらにロスの元妻やクラークの元恋人が会社に加わったことで話がややこしくなり…という設定。

劇中に出てくる心理操作というのがいまいち良く分からんのだが、要するに人に暗示をかけるようなものかな?マインドコントロールではないと明言されてるんだけどね。「アドレナリンが放出されて気分が高揚した直後は暗示にかかりやすくなる」などといったもっともな説明がされたりするんだが、どこまで本当なのだろう。さらに結局はクラークの知識よりもロスの手腕に頼ってたりして、それって心理操作というよりも単なる詐欺ではないの?という気がしなくもない。

クリエーターはカイル・キレン。って「LONE STAR」と「AWAKE」の人か…かなり低い打率を誇っているような。さらにロスを演じるのがクリスチャン・スレーター。彼も出演したシリーズはことごとく短命で終わっている人なので、なんか不安だな。そしてクラークを演じるのがスティーブ・ザーン。俺は彼がとても好きなので頑張って欲しいところですが、長続きするかな…。

なんか話がいろいろ詰め込まれすぎで、それはそれで悪いことではないのだけど、視聴者の多くはついてけないんじゃないでしょうか。兄弟ふたりもケンカしてるばかりだし。もうちょっと頑張る必用があるであろうシリーズ。

「それでも夜は明ける」鑑賞


ネタバレにならない程度に感想をざっと。

・その題材や主人公の経験する物事は確かに過酷なものなんだけど、圧倒的な映像美や役者の巧みな演技によって、意外と角がとれて観やすい内容になっていた。あまりクセがなくて歴史もので感動のドラマ、という点では確かにアカデミー好みの作品ではあるな。

・主人公が精神的かつ肉体的な試練を受けるという内容は、監督の前作「シェイム」よりもその前の「HUNGER」のほうに似ていると思いました。

・キャストは豪華なんだけど、いろいろ出過ぎてみんなの出番は比較的短いよ(ファスベンダーは除く)。マイケル・K・ウィリアムスなんて冒頭に出てきたかと思いきやどこかに行ってしまったし。

・ルピタ・ニョンゴの演技は巧いが、アカデミー賞とるほどのものか?マイケル・ファスベンダーのほうがずっと鬼気迫る見事な演技をしていたぞ。

・ポール・ダノはかん高い声でわめくとっちゃん坊やの役ばかり最近は演じてるような。

・そしてプロデューサーもやってるブラッド・ピットはちゃっかりおいしい役を演じてんなあ。

・黒人は当時からaskをaksと発音していたのか?あれヒップホップ文化のスラングだと思っていた。

最初に書いたように良くも悪くもクセがないけど、良い作品ですよ。自国の恥ずべき歴史を描いた映画に賞をちゃんと与えるところが、アメリカの懐の深いところですかね。

ゴールデンエイジのコミックスのアーカイブ


「AVクラブ」の記事で知ったのだけど、「THE DIGITAL COMIC MUSEUM」なるサイトで大量のゴールデンエイジ(1950年代初頭くらいまでの作品のこと)のコミックが閲覧できるようになっている。数千冊くらいのコミックがアーカイブされているのかな?

ブラウザ上ですべて無料で閲覧できるほか、登録(これも無料)すればCBRファイル形式でダウンロードでき、リーダーアプリなどで読めるという便利さ。作品はみんな有志が原書やマイクロフィッシュをスキャンしてアップロードしているのかな?昔のコミックのマイクロフィッシュって日本の大学にも保管されてたりして、学生時代に卒論の参考にするために閉架書庫から引っ張りだしていた憶えがある。

公開されている作品はすべてパブリックドメインに属しているものらしく、DCコミックスやマーヴェル(もしくはその前身の会社)の作品は置いてないものの、検索するとジョー・サイモン&ジャック・カービーのロマンスものとか、スティーブ・ディトコの初期の作品とか、ジャック・コールの「プラスチックマン」とか、ウィル・アイズナーの「ザ・スピリット」とか、有名どころもざっと揃っていてかなり凄い(つうか「ザ・スピリット」ってパブリックドメイン作品なのか?)。

当時のコミックの常として作家のクレジットが明記されていないものの、意外な人が意外なコミックを描いているのを見つけるのも面白いかと。またコミックス・コード(いわゆる倫理規制)が敷かれる前の作品は、思ってた以上に性的に刺激的なものがあるのも新しい発見であった。いまでこそスーパーヒーローものが大半を占めるアメコミだけど、当時はロマンスやらホラーやらウェスタンやら、多種多様なジャンルで市場が満ちあふれていたんだよな。あとは日本軍がプロパンガンダ的に悪役扱いされてたり、黒人やアジア人がグロテスクなカリカチュアとして描かれていた時代があったというのを知るのも勉強になるかと。

アメコミの初心者にもマニアにもお勧めできるサイト。

「THOSE WHO KILL」鑑賞


A&Eの新作刑事ドラマで、デンマークの作品のリメーク。なんか北欧の人たちって「キリング」とか「ザ・ブリッジ」とか陰惨な刑事ドラマばかり作ってるような気がするのですが、暗くて寒いところに住んでるとそういう気性になるのでしょうか。

ピッツバーグ市警の警部であるキャサリン・ジェンセンは、工場で発見された変死体がシリアルキラーの犠牲者であることを見抜き、犯人を捕まえるために犯罪心理学者のトーマス・シェイファーの手を借りることにする。犯人の手がかりをつかんで新たな犠牲者が出るのを防いだ2人だったが、犯人には逃走され、さらにその後にはキャサリンが捕まってしまい…というような内容。

まあ典型的な猟奇犯罪ものかな…ケーブル局の番組なので描写はちょっとグロいです。犯人の猟奇性というよりも主役2人のメンヘラぶりに重きが置かれているようで、トーマスは事件解決を忘れて犯罪者の心理に没頭してしまうし、キャサリンは過去のトラウマを抱えているために振る舞いがちょっとサイコさんぽかったりする。今後は2人の過去が徐々に明かされていく展開になるのかな?心にトラウマを抱えた者がシリアルキラーの心情を理解できる、というのが作品のテーマなんだろうけど、その割にはキャサリンはあまり敏腕ではないような…犯人に2〜3回くらい裏をかかれていたぞ。

キャサリンを演じるのがクロエ・セヴィニー。だんだん彼女は体格が立派になってってますね。トーマスを演じるのがイギリス人のジェームス・ダーシーで、彼ってポール・マッガンに似てるな。あとはブルース・デイビソンが今後のエピソードに出てくるみたい。

今後の展開次第では面白くなるかもしれないが、第1話を観た限りでは他の猟奇もののTVシリーズと大差ないかもしれない。地上波ネットワークでも「ハンニバル」が高い評価を得ていることを考えると、もうちょっと頑張らないといけないと思う。

「Nemo: The Roses of Berlin」読了


『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』最新作だよ。前作「Heart of Ice」から思ったよりも早いタイミングで続編が出てきたな。主人公は前作と同じジャンニ・ダカール。この後はネタバレ注意な。

舞台は1941年。第二次世界大戦の戦火が世界を揺るがすなか、ジャンニの娘は15歳にして征服者ロビュールのもとへ嫁ぎ、ジャンニは夫のブロードアロー・ジャックとともに海賊業に専念して、アデノイド・ヒンケル率いるトメニア(「Black Dossier」にも出てきたナチスのアナローグね)の船を襲撃していた。しかしそんな彼女のもとに、ロビュールとジャンニの娘が乗った飛行船「The Terror」がトメニア軍によって撃墜され、2人が捕獲されたという知らせが入る。愛する娘たちを救出するために、夫と2人で急いでベルリンに潜入するジャンニ。しかしそれはヒンケルたちが仕掛けた罠であり、彼女たちを待ち受けていたのはドイツ版「リーグ」こと「黄昏の英雄たち」の残党たちであった…という展開。

人外魔境が舞台だった前作とは一転して、今回は人でごったがえすベルリンでの冒険活劇となっている。「黄昏の英雄たち」は以前にも「Black Dossier」で言及されているが、そのメンバーはロボット・マリアやカリガリ博士、ドクトル・マブゼなど。また前作からの因縁の的も登場するぞ。登場人物などの元ネタは戦前のドイツ映画からとってきているものが多いかな?たぶん俺が見逃しているネタも多々あるはずなので、ここはジェス・ネヴィンズ氏あたりがまた注釈用のウェブサイトを立てることに期待しましょう。なおドイツ人のキャラクターの多くは当然ながらドイツ語で話していて、アラン・ムーア作品の常としてそれらの対訳は用意されていない。これが以前に出てきた火星語とかだったら普通に読み飛ばすのだが、ちゃんと意味のあるドイツ語が読めないというのは何か損した気分になってしまいました。

なおちょうどこれを読む前に、ムーアのやたら長いインタビューを読んでおりまして、「ムーアの作品は女性が暴行を受けるものが多い」という批判に対する反論をムーアが行なっていたりするのだが、この作品では50歳を目前にしたママさんのジャンニが同じく女性の敵たちを相手に死闘を繰り広げ、女性のパワーのようなものをひしひしと感じられる内容になっていたな。圧倒的な戦力差があるはずなのにジャンニたちが強すぎるような気もしたけど。

そして次作は1975年の南米を舞台にした「River Of Ghosts」という題名になるらしいぞ。ネモ三部作の最終巻らしいが、年代的に主人公はジャンニの娘になるのかな?あとムーアは魔術の手引書である「The Moon and Serpent Bumper Book of Magic」なる本も執筆しておりまして、こちらも面白そうなので年内にには刊行して欲しいと願っているのであります。