「RED ROAD」鑑賞


いつの間にか「サンダンスチャンネル」から改名していた「サンダンスTV」の新作ドラマ。

サンダンスチャンネルってマイナーなインディペンデント映画を放送するチャンネルというイメージが強かったのだけど、最近では「Top Of The Lake」や「The Returned」といった評判が高い海外の評判が高いTVシリーズを放送したり、冤罪が証明されて十数年ぶりに故郷に帰ってきた死刑囚の姿を描いたオリジナルドラマ「Rectify」などを作ったりして注目されているチャンネルなのであります。これらのドラマのざっくりとした共通点は「田舎町が舞台のサスペンス」「その田舎には湖があって、死体が沈んでる」といったところでして、決して気軽に観られるような内容ではないのだけど、改名してさらにTVシリーズに力を入れていくんじゃないかな。

そしてこの「RED ROAD」は「Rectify」に続く第2のオリジナルドラマで、舞台はアパラチア山脈のインディアン居留地。そこでニューヨーク大学の学生が行方不明になるという事件が起き、警官であるハロルドは捜索をはじめる。じつはその大学生はインディアンの男によって殺害され、湖に沈められていた(ほらね)。ゴロツキの親分に命じられ、その後始末をするために前科者のフィリップがやってくるのだが、ハロルドの元アル中の妻が起こした不祥事の証拠をフィリップが掴んでしまい…というような内容。

あとはインディアンと白人の微妙な関係をバックに、ハロルドの娘とフィリップの弟の恋愛などが描かれ、相変わらずドロドロとした展開になっています。大学生が殺害された理由などは説明されず、第1話を観た限りでは話の全貌が分かりにくいのも「Top Of The Lake」とかと同じか。ノワール的な雰囲気は悪くないんだけどどね。

ハロルドを演じるのはマーティン・ヘンダーソン。あー「OFF THE MAP」のイケメン医者やってた人ね。そしてフィリップを演じるのが「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイソン・モモア。彼ってハワイアンというイメージが強かったんだけど、いちおうネイティヴ・アメリカンの血もひいてるのか。あとは私生活のトラブルで隠匿していたトム・サイズモアが久しぶりにゲストとして顔を見せている。

面白い番組になるかどうかは今後の展開を待たんと何とも言えんな。「Top Of The Lake」が日本で放送されたのでこちらも日本に来る可能性はあるかもしれないが、骨太な男のドラマなので受けはしないだろうな。

「MAN OF TAI CHI」鑑賞


日本(だよね?)を舞台にした「47 RONIN」が批評的にも興行的にも壊滅的な結果であったのが記憶に新しいキアヌ・リーブスだが、実はアジアチックな映画に昨年もう1つ出ていて、さらにこちらでは初監督まで務めている。舞台は中国、セリフも殆ど中国語という完全な中国映画なのだが、これってキアヌが「僕が出演と監督やるから映画を作らせてよ」と中国資本にアプローチしたのかな。結果としてはやはりトンデモな作品になっていて、以後はみっちりネタバレしながら書くのでご注意ください:

タイガー・チェンはリンコン太極拳を学ぶ若者で、配達業のバイトをしながらも老師の唯一の弟子として修行に励んでいた。太極拳は精神的なものだと老師に説かれるものの、その可能性を世に知らしめたいと思ったタイガーは異種格闘技のトーナメントへと出場する。太極拳ってゆっくり動く体操のようなイメージがあるけど、彼のリンコン太極拳はれっきとした武術であるらしい。そして初戦を勝利で飾ったタイガーは、その格闘スタイルを謎の大富豪ドナカ・マーク(キアヌだよ)に目をつけられる。

ドナカは香港で闇の格闘技場を運営しており、そこでの究極の試合は選手の生死をかけて戦われるものであった。彼の行いは中国警察にも不審に思われており、覆面捜査官が選手として内部に潜り込んでいたものの、負けた選手を殺めるのを拒んだために、逆にドナカによって刺殺されていた。なおドナカは負けた選手を始末するときにマスクを被るのだが、着てる服は一緒なので正体がバレバレである。何のためのマスクなんだ…。

ちなみにこの映画にふんだんに出てくる格闘シーン、素人目にはそれなりに迫力があって役者もよく動いているんだけど、どうもカット割りがやたら多くて「カットの合間に動きを修正してるよね?」と思わせてしまうのが勿体ない。もっと引きの画で長まわしにしてくれても良かったのに。あと主人公のパンチに迫力が無いような。

そしてドナカの「うちで警備の仕事をしない?」という誘いに興味をもったタイガーは、ドナカの部下の車に乗って彼のもとへと向かう。香港まで行くことを知らずに、空港で「どこへ俺を連れて行くんだ?」と驚くシーンがあるんだが、中国本土の人ってそんな容易に香港へ行けるんだっけ?税関は普通に彼を通していたぞ。

そしてドナカの会社についたタイガーは、だだっ広い部屋において何者かに襲われ、驚きながらも彼を撃破する。この「面接」をパスした彼は闇の格闘技場で戦うようドナカに誘われるが、即答はできなかった。しかし老師の寺院が安全基準を満たしていないために取り壊しの危機に面していることを知ると、その修繕費用を稼ぐためにタイガーはドナカのもとで戦う決意をする。この寺院の危機ってドナカの手回しかと思ってたが、どうも全くの偶然だったらしい。というか600年の伝統を誇る寺院の修繕費って自治体とから出ないんだろうか?

格闘技場では連戦を重ね、賞金を手にして羽振りが良くなっていくタイガー。両親にも洗濯機や車とかを買ってあげたりしてるんだが、それより寺院の修繕が先ではないのか?また彼は格闘技場でスキルを憶えるにつれてダークサイドに堕ちていき、表舞台の異種格闘技戦でもエゲツない戦いをするようになる。このとき着ている服が白から黒になるというのがね、実に分かりやすい図式になってますね。

しかしそのエゲツなさが災いして老師とケンカしたうえに当局に嫌われ、寺院の取り壊しはそのまま行なわれることに。それでもダークサイドに惹かれたタイガーはズルズルと格闘を続けていく。しかしこの作品、主人公が戦いを続ける理由がなんか希薄なのだ。トーナメントで太極拳をアピールするわけでもないし、金があっても寺院が救えたわけじゃないし。親兄弟の仇とか、難病の妹とかいった理由をつけてもバチはあたらなかったと思うぞ。

そんなタイガーに、ドナカを追う女刑事が接触し、タイガーは調査に協力することに。そしてついに彼は、生死をかけた決戦に向かう。そして試合前、会場に集まった怪しい客たちの前に披露されるのは何とタイガーの伝記映像!幼少の頃の映像に加えて、いかに彼が最強の戦士になっていったかが語られ、そこまでにしとけば良かったのに、彼がダークサイドに堕ちてエゲツない戦士になったことまでが丁寧にも説明される!これって風俗嬢に身の落ちぶれ方を説教するようなもので、これを見て目の覚めない奴はいないと思うのだが、何がしたいんだキアヌ。

そしてついに登場したタイガーの決戦の相手、それは特別出演した「ザ・レイド」のイコ・ウワイス!太極拳とインドネシアのシラットの熱い戦いが見られるかと思うと期待はいやがうえにも高まるのですが、さっきの映像を観てダークサイドから醒めたタイガーは「俺はお前とは戦わん!」と対戦を拒否!代わりにカメラを通じて試合を観ている客たちに向かって「俺は、お前らと戦う!」と言い放つのですが、目の前にいる敵から逃げ回りながら言っても全然説得力ないぞ。そんなうちに警察が会場になだれこみ、イコ・ウワイスとの一戦はお流れに。ドナカだけは会場から真っ先に逃げるのだが、泳いで本土まで行くたくましさ。ボートくらい用意しとけよ。

こうして闇の格闘技場を運営していた一味は壊滅し、老師のいる道場へと戻るタイガー。しかしそこで彼を待ち受けていたのはドナカだった。お前の命はもらった!とばかりに襲ってくるドナカ。悪役をアメリカ人とか日本人とか中国人官僚とかにせず、キアヌ本人にしたのは政治的なしがらみとかが出なくて巧いとは思うが、キアヌの格闘シーンがいちばんフェイクっぽく見えるのが興醒めである。だからイコ・ウワイスとの一戦で〆ておけば…。

しかしダークサイドから脱して太極拳をマスターしたタイガーにとって、ドナカはもはや敵ではなかった。タイガーの波動拳(いやホントに)を受けて絶命するドナカ。最後に「お前ならやってくれると思ったぜ…」と捨て台詞を吐くのだが、タイガーは結局ダークサイドに堕ちなかったし、自分の組織は壊滅してるし、全く自分の思った通りになってないじゃん!いったい何がしたかったんだキアヌ。

というわけで、なんかベタな展開の続く作品でありました。出来の悪い少年マンガを読んでいるような感じであったよ。これでも何故かアメリカでは「47 RONIN」より評判が良かったんだよなあ。俺キアヌ・リーブスは決して嫌いな役者ではないのですが、とりあえず監督とか製作からは手を引いて、才能ある監督のもとで役者に徹したほうが良いのではないかと、老婆心ながら思ってしまうのです。

「COMPUTER CHESS」鑑賞


昨年アメリカで公開されたインディペンデント映画。

舞台は1980年代初頭(おそらく)。とあるホテルにおいてコンピューター同士のチェスの団体戦が行なわれ、コンピューター少年たち(および少女1名)が次作のプログラムを抱えてホテルにやってくる。さらに同じホテルではカップル向けのセラピー・セッションが行なわれており、さまざまな人物がチェスのコマのごとくホテルを行き交うのだった…とかいうような内容。

というか話のプロットが存在しないような…。プログラムに目をつけたペンタゴンのエージェントたちが登場し、自我を持ったコンピューターの存在が示唆されるものの、話は決してSFやサスペンスにはならないし、コメディっぽいようでシュールな会話が続くだけだし、何と言ったらよいものか…。コンピューターと人間の関係の始まりを描いてるという説もあるようだけど、よく分からんのよね…。

映像はモノクロのビデオ撮りで、70年代のビデオ機材をeBayで入手して実際にそれで撮影を行ったらしい。一カ所だけカラーになるけど、悪夢のようなリピート映像になっております。監督のアンドリュー・ブジャルスキーはマンブルコア出身の人らしいが、インタビューを読んでも意図したかったことがよく分からず。それでも「AVクラブ」なんかは昨年のベスト映画の1つに挙げているんだよな。どこをどう読み取ればよいのか…。

モノクロ映像ということで昨年の「Escape From Tomorrow」に似てなくもないが、あれよりもずっと説明を拒否した、よく分からん映画でした。どなたか内容が解読できる方がいましたら教えてください。

チャーチズのライブ鑑賞

年末に「年取ってから後悔する37の事柄」という記事を読みまして、ならば俺はこれらの事を後悔しないように生きようと思いまして、なんか典型的なミッドライフ・クライシスの兆候が出ているわけですが、その37の事柄の1つに「機会があったときに好きなミュージシャンのライブに行かなかったこと」というのがあるわけですね。

それとこないだ書いたように90年代とかの音楽ばっかり聴いてるのも良くないよね、もっと新しい音楽を聴かないといけねいよね、と奮起して「AVクラブ」が選んだ2013年のベスト・アルバム群を片っ端から聴いてみたわけですね。そのなかではハイムやチャーチズ、デフヘヴンなどの曲が良いなと思いまして(逆にヴァンパイア・ウィークエンドは何度聴いてもピンとこない)、そのうちのチャーチズが来日することを知ってさっそくチケットを入手した次第です(本当はハイムがその前に来日してたのだがソールドアウトだった)。

場所は恵比寿のリキッドルーム。ワシが若い頃はリキッドルームは新宿にあったんじゃがのう。スタッフの対応はイマイチだったけど、会場は広くて良かったですよ。昨年ワイヤーが来日したときの、恵比寿の別のライブハウスは音が割れまくってたからなあ。

前座はエラーズとかいうグラスゴーのポストロック・バンド。事前にyoutubeでチェックしてた印象とは異なり、意外とギター・ロックっぽい編成であった。特にドラムのエフェクトのかけかたが面白かったな。しかし機材のトラブルが続き、1度はラップトップが落ちたとかで曲をまるまるやり直すはめに。エレクトロニカのバンドってこういうのが弱みだよね。「バンド名のとおりエラーが起きました、HAHA!」などと笑ってごまかしていたが、こういうときにブーイングしない日本の観客って人がいいよね。

そしてメインのチャーチズ登場。ボーカルの声がちょっと出てなかったような感じもしたけど、まあ許容範囲。ただこちらも機材トラブルがあったらしく、モニターの返りが悪いとかで3曲目あたりでいったんライブが中断したのに萎える。その後は順調に進んだけど、エレクトロニカ系のバンドってどうしても即興性に欠けるというか、カラオケっぽい感じになると思うのは俺の勉強不足でしょうか。あとアルバム同様に男性ボーカルの曲が1つあったんだけど、なんかヘタでした。今後は女性ボーカルに専念しなさい。

というわけで久しぶりにライブに行けて面白かったです。今年はもっとライブハウスに足を運ぶようにせねば。

「Babylon」鑑賞


チャンネル4の新シリーズ。今回のはパイロットムービー的な扱いで、秋からシリーズの撮影が始まるとか?監督はなんとダニー・ボイル。オリンピックの演出やったかと思いきや「トランス」撮って、そのあとこれを撮るとは忙しい人ですね。

イギリスの警察の世間の評判を回復させるために、スコットランド・ヤードはPRコンサルタントのリズ・ガーヴェイをアメリカより招聘。さらに警官たちの日常を撮影させるためにカメラマンを同行させる。リズはさっそく警察のイメージ向上にとりかかるものの、前任者の仲間の妨害などに遭って苦労する。さらに悪いことにロンドンで何者かによる連続狙撃事件が発生して…というプロット。

上は警視総監から下は現場の警察官まで、警察の混沌とした日常を赤裸裸に描いた内容になっていて、警察の指揮系統内、およびメディアに対する情報伝達の錯綜っぷりが大きなテーマになっている。ただしPRコンサルタントが主役とはいえ「The Thick of It」ほどのドギツさはないかな。

リズを演じるのが「ザ・イースト」のブリット・マーリングで、僅か数本の出演作で知的なブロンドという役柄を確立した感のある彼女ですが、そのキャラをそのまんまイギリスにも進出させております。警視総監を演じるのがジェームズ・ネスビットで、少し痩せたかな?主要なキャストのほかにPTSD気味の機動隊員とか警官に同行するカメラマンとかが出て来るんだけど、後のシリーズ版ではどこまでが再登場するんだろう。

登場人物が多いことに加え、話のトーンがコメディになったりサスペンスになったりと全体的に散漫な感じがするものの、演出は相変わらず巧みだしそれなりに楽しめる作品であった。最近のイギリスの警察ドラマって陰惨な展開のものが多い気がするので、こういう軽めのものがあっても良いかと。imdbなどでは評判が芳しくないみたいだが、シリーズになって本調子になってくることに期待。