ジョー・キューバート死去


85歳。アメコミの巨匠がまた1人亡くなってしまった。

一説によると彼は8歳のときからウィル・アイズナーの事務所で雑用を手伝うようになり、12歳のころにはすでに絵を描くことで給料を得ていたという。そんな彼はガードナー・フォックスやロバート・カニハーといったライターたちとともに、宇宙からやってきたシルバーエイジ版ホークマンや第二次世界大戦の戦地を行くサージェント・ロック&イージー・カンパニー、真っ赤な複葉機で大空を舞うエネミー・エース、原始人のトーなどといった人気キャラクターを次々と生み出していった。ヘルメットの陰で鋭い目つきを光らせるロック軍曹の姿とかはカッコ良かったなあ。

さらに彼の仕事はスーパーヒーローものや戦争ものに限らず、ユダヤ教に関するコミックスやサラエボ内戦を描いたものなど多種多様にわたり、従軍経験もある彼は軍の備品のメンテナンスに関する機関誌のイラストを担当したりと、死ぬ直前まで精力的に仕事を続けていた人物であった。これに加えて彼は息子ふたり(アダムとアンディ)を業界トップレベルのアーティストに育てたほか、コミックの技法を教えるキューバート・スクールを設立し、スティーブン・ビセットやトム・マンドレイク、ティム・トルーマンといった著名アーティストたちを輩出したという、アメコミ業界に多大な影響を与えた人物であったわけです。

もっと多くの作品を生み出してくれるかと思っていたのに、お亡くなりになってしまって悲しい。安らかに眠れ。

「プロメテウス」鑑賞


先行上映で鑑賞。ネタバレにならない程度に感想を挙げていくと:

・監督の意向でプロモーションでは曖昧にされてるけど、「エイリアン」(当然第一作ね)の完全なプリクエルです。あれを先に観ておくことを強くお勧めします。
・科学考証とか登場人物の動機とかはツッコミどころが山ほどあるんだけど、細けーことは気にすんなよ!大金がつぎ込まれたであろう驚異のビジュアルと、先の読めない、殆ど行きあたりばったりなストーリー展開を黙って楽しみましょう。
・話の前半はセンス・オブ・ワンダー溢れるハードなSF映画といった感じで、遺跡を捜索する描写はゾクゾクさせてくれる。後半になると当然ながらヌルヌル、ヌメヌメした展開になるのですが、前半のノリでデニケン的な映画になったとしてもそれはそれで面白かったかも。
・ガイ・ピアースに老けメイクを施すよりも、老人の役者を雇ったほうが安上がりだったろうに。あとパトリック・ウィルソンが30秒くらい出演してた。
・スペース・ジョッキーのホログラム映像などは、3Dで観る価値あるかな。ホタルイカとかゲソを食いながら観るとさらに臨場感がアップするでしょう(特に女性)。
・スティーブン・スティルスってアコーディオンなんか演奏したっけ?
・ゴムはつけろよ!

全体的な雰囲気は「エイリアン」よりも、もしかしたら「プレデターズ」に近いかも。あれが許容できる人ならこの映画も好きになれるはず。あと「エイリアン」に便乗したパクリ映画「ギャラクシー・オブ・テラー」に意外とプロットが似ているような?

前述したようにツッコミどころというか疑問点が山ほどある作品だけど、個人的にはかなり楽しめる作品でしたよ。さっそく続編の話がでているようなので、今回の謎がそちらで解明されることに期待しましょう。

「GO ON」鑑賞


「GOON」じゃなくて「GO ON」な。「STUDIO 60」「MR.SUNSHINE」と主演作の打ち切りが続いているマシュー・ペリーが主演のNBCの新作シリーズで、どんどん無難な役を演じてるように見えるけど仕方ないのかなあ。

ライアンはラジオ局の人気スポーツキャスターだったが妻を不慮の事故で亡くし、1ヶ月間の休養を得て復帰するものの、まだ精神的に落ち着いていないことを心配した上司からグループカウンセリングを受けることを命じられる。こうして心に傷を負った人たちが集まるカウンセリングのクラスに嫌々ながら出席したライアンは、とっととクラスを終了させたくて、自分なりのカウンセリング・セッションを考案するのだが…というようなプロット。

悲しいことがあっても笑って生きてきましょうね、というようなテーマのコメディのはずなんだけど、ユーモアとペーソスの配分が致命的に間違ってるような?他愛もないジョークのあとに「実は兄がスキー事故で昏睡状態で…」なんて話が続くと、笑っていいのかどうか戸惑ってしまうのだよ。別に心に悩みを抱えてる人を笑いの対象にしたり、コメディにペーソスを交えることは悪いことだとは思わないよ、ジャド・アパトーの作品なんてみんなそんなものだし。でもこの番組はコメディとペーソスの割合が4:6くらいで、どうも観ていてしっくりこない内容になってしまっている。

また第1話の時点ではライアンがDJであることが全然活かされてないし、彼の上司をジョン・チョウが演じてるのにほんのちょっとしか出演してないのも残念。あと「クセのある人たちの集まりに渋々やってきたチャラ男」という設定が同じNBCの「COMMUNITY」に酷似してるのは今後いろんなところからツッコミを受けるのではないかと。

マシュー・ペリーって「フレンズ」の役者のなかではいちばん演技の幅がある人だと思うので、こんなプロットに問題のあるシリーズに出るのは勿体ないと思うのだが…。やはり「STUDIO 60」の失敗が影響してるんだろうか。

「ダークナイト ライジング」鑑賞


一部で言われてるほど悪い映画ではない。というか普通に優れた映画なのだが、必然的にあの傑作「ダークナイト」と比べられてしまうのが損なところか。あっちは悪役の動機やオリジンを説明する必要がなかったし、後味の悪い終わり方も「次があるから」で済ませることができたが、こちらは話をきちんと畳まないといけないわけで、そうなると万人を満足させることはまず無理だったのでは。とりあえずネタバレ気味の雑感をいくつか:

・ベインは話し方が異様にカッコ悪い。なぜパブで一杯やってるオヤジのような話し方をするのかと思ったら、アイリッシュ・トラベラーの拳闘家をモデルにしてたのか。なんか知的なストラテジストのようには聞こえないのよね。そもそも彼の組織は変なアクセントで話す人が多いような。

・3時間近い長尺でありながら、「増長した主人公が痛い目にあう」とか「時限装置付きの爆弾は(悪役が望むようには)爆発しない」といったクリーシェに多くの時間を割いてしまったのが残念。映画で「驚異の新エネルギー」みたいなものが出てくると必ず悪用されるよね。

・前作のラストでバットマンは警察に追われる身となったわけだから、今回のクライマックスで市民とでなく警官たちと蜂起する展開はそんなに変だとも思わなかった。昼間にバットマンを登場させるのは好ましくない演出だと思うが。

・「トーチウッド」のバーン・ゴーマンが意外と出演シーンが多かった。あとは「ザ・ワイヤー」のエイダン・ギレンやロバート・ウィズダムがチョイ役で出ていていい感じ。そしてマシュー・モディーンはあんなに背が高かったのか。

観てて楽しみつつも、「前作ほどではないな…」と頭の片隅で思ってしまうという、複雑な心境にさせる作品であった。このまま「スパイダーマン」みたいにフランチャイズを安易にリブートさせるのは勿体ないから、「彼」を主人公にした新たな3部作を作ればいいのに!

「The League of Extraordinary Gentlemen, Vol. 3: Century, No. 3: 2009」読了


ついに出てきたLOEG最終章。当初の予定からどれだけ出版が遅れたかはタイトルを見れば明らかですな。

2009年において「リーグ」は解散状態にあり、ミナ・ハーカーは前作の終わりからずっと精神病院に入れられ、アラン・クオーターメインは再びヤク中になってホームレスに身を落とし、オーランドーは中東の戦地において生ける殺戮機械と化していた。そして彼らが阻止するはずだったアンチクライストはすでに誕生してしまっていた。これについてプロスペローから叱責されたオーランドーは40年ぶりにミナを見つけ出し、2人はアンドリュー・ノートンの助言を受けて北の魔法学校に向かうのだが…というような展開。

毎度のことながら当時の文化に関するリファレンスがてんこ盛りの内容になっているわけだが、ほぼ現在が舞台になっているだけに従来の話よりも分かりやすいネタが多かったような?「ハリー・ポッター」やジェームズ・ボンドなどといった明確な元ネタなどに加え、マルコム・タッカーやドクター・フーの面々といったブリティッシュな人たちのほか、意外とアメリカンなネタも盛り込まれていた。まさかアラン・ムーアのストーリーにおいて「バーン・ノーティス」や「30ロック」などが言及されるとは思ってもいなかったよ。また「リーグ」にしては珍しく、実在の人物(ジョニー・デップやアミン大統領)への言及がチラホラあったような。

また今までの話に比べてムーアのメッセージが強く打ち出されており、それは「現代における文化は貧相なものになってしまった」ということ。人々はビクトリア王朝時代のように貧しくなり、当時よりも希望がなく、そこから生み出される文化は弱々しいものばかりであり、それが「リーグ」の世界や魔法の世界の荒廃として反映されているのだという。そしてアンチクライストを倒して生き残るのは現代人ではなく、少なくとも60年代以前から活躍していた女性たちであり、彼を倒しても万事よしになるわけではないことがラストで示唆されている。

このムーアの厭世的なメッセージが少し鼻につくところもあるし、ネモ船長の子孫がほとんど話に絡まなかったり、肝心のアンチクライストが意外と弱い(世界に破滅をもたらす規模では火星人たちの比にもならない)といった不満もあるものの、これによって「リーグ」の長い歴史がついに最終章を迎えたことを考えると感慨深いものがありますな。とはいえこれで「リーグ」の話が終わったわけではなく、「Nemo: Heart Of Ice」などといった外伝が早くも年末に出るらしいので(ホントかよ)、今後さらに「リーグ」の世界が掘り下げられていくことに期待しましょう。