「WISH 143」鑑賞


こないだアカデミー賞の短編賞にノミネートされたイギリスの作品。オンラインで公開されていた

末期ガンにより死期が近づいた15歳の少年が、慈善団体から何か願いをかなえてあげると伝えられたとき、彼が望んだのは「女の人とヤること」だった…という内容で、死を目前にしながらも口が達者でひねくれた少年と、彼を見守る牧師とのやりとりを中心に、どうにか女性と寝ようと悶々とする少年の姿が描かれていく。

ユーモラスな会話や描写がある一方で、テーマがテーマだけに全体的にしんみりとした内容になっているかな。「心優しい娼婦」といういかにも映画的なキャラクターが出てくるのはどうかと思うが、ラストはホロリとさせてくれるし、決して悪い作品ではないですよ。20分ちょっとの作品なので、時間のある人はぜひ観てみてください。

「DOGTOOTH」鑑賞


あちこちで高い評価を得ているギリシャの映画。

話の舞台となるのは人里離れたところにある屋敷で、そこでは3人の若者たち(娘2人と息子1人)が両親によって外界と隔離され、塀の外へは一歩も出ることができずに一家だけで暮らしていた。屋敷を出ることができるのは父親だけで、息子の性欲の対処のために父親の会社で働く警備員の女性が娼婦として連れてこられるほかは、子供たちは塀の外の世界のことをまったく知らされずに育てられていたのだ。さらに両親に都合の悪いような言葉はすべて意味を違えて教え込まれ、例えば「海」は革製の椅子で、「ゾンビ」は黄色い花、というように。また彼らは架空の第4の兄弟がいることを教えられ、彼は罰として怖い外界へ追放されたことを告げられる。それでも年をとるにつれて外界への興味を抱く子供たちに対して、父親は「犬歯(ドッグトゥース)が抜け落ちる頃には外に行く準備ができるはずだ」と伝えるのだが…というような内容の物語。

とにかくものすごくシュールな展開が続く映画で、両親がなぜ子供たちをそのように扱うのかという説明は一切なし。両親にすべてを管轄された世界における子供たちの様子を淡々と描いていっている。個人的には北朝鮮のような独裁国家において偽の情報を与えられる国民のアレゴリーを感じたんだけど、監督のインタビューを読む限りではそうした意図はなくて、友人たちが子供を持つようになってとても過保護になっていくさまを見てこの映画を思いついたらしい。

ストーリーだけ聞くととても重そうな内容に感じられるかもしれないが、実は制限された環境のなかで右往左往する子供たちの様子がひたすら面白く描かれていて、最初から最後までゲラゲラ笑える作品であったりもする。屋敷の庭にネコが出たからといって「ネコというのはこの世で最も恐ろしい動物だ!奴らを追い出す方法を学べ!」と父親に命じられてイヌの鳴き声を必死に練習するシーンとかは大爆笑ものですぜ。ダンスのシーンもすごかったな。

子供たちの性的な目覚めを反映した、結構きわどいシーンも多いのでそのまま日本で公開されるかは非常に疑問だが、多くの人に見て欲しい衝撃的な映画でありましたよ。

あと次女を演じる女の子がすごく可愛かった。

「CATFISH」鑑賞


いまの時点でこの映画について書くことはすべてネタバレになりそうな気がするので、以下は白文字で書きます:

ニューヨークで写真家をやっている青年ヤニフのところに、アビーという6歳の少女が彼の写真をもとにして描いた絵がある日送られてくる。それがきっかけでヤニフとアビーはフェイスブックを通じた交流を行うようになり、さらにアビーの母のアンジェラや姉のミーガンとも仲良くなり、特にミーガンとは遠距離恋愛めいた仲になるヤニフ。彼はアビーの一家との交流を描いたドキュメンタリーを作ろうと、兄たちとともに出来事を撮影していくのだが、ミュージシャンだと自称していたミーガンの曲が他人のものであることに気付く。これで彼女やアンジェラの言うことに疑惑を抱いたヤニフたちは、ミシガンにある彼女たちの家を訪れることにするのだが、そこで彼らを待っていたものは…というようなドキュメンタリー。音楽をディーヴォのマーク・マザーズバーが担当してた。

アートに関するドキュメンタリーっぽく始まって、中盤はサスペンスかホラーか?と思わせときながら、最後はSNSサービス時代の人間関係についてのドラマで終わるという、なかなか一筋縄ではいかない作品だったよ。トレーラーなどではホラーであるかのような宣伝をしてるけど、まったくそういう作品ではないのでご注意を。俺も障害者の兄弟が出てきたあたりでは「悪魔のいけにえ」みたいな展開になるのか?と思って身構えたけどね。

サンダンスでの初公開時から「これは偽ドキュメンタリーではないか?」という疑惑が絶えなかった作品で、いまでも世論は二分されているみたい。確かにヤニフの言動がやたらカメラ慣れしていたり、突発的な海水浴のシーンでもちゃんと防水カメラが用意されてるなど怪しい要素はいくつかあるんだが、個人的にはこれは真っ当なドキュメンタリーだと思う。もし偽のドキュメンタリーだとしたら前述の障害者たちをかつぎ出したことについて製作者たちは相当な社会的制裁を受けることが明らかなわけで、それだけのリスクを冒す意味がないと思うので。

こうした宣伝のギミックや話の真偽にまつわるハイプが大きすぎるので、実際に本編を観たあとはどうしても肩すかしされた感が残るというか、この映画を観たことで得られるものは何なのかというと少し考えてしまう。フェイスブックやGoogleが出てきたことでこういう人間関係も生じるんですよ、ということを描いているという意味ではよく出来た作品なんだけどね。

繰り返すが、この映画のトレーラーはものすごくミスリーディングなものなのでダマされないように…。

「BEING HUMAN」(アメリカ版)鑑賞


SYFYチャンネルの新作で、BBCの同名作品のリメーク。

舞台がアメリカになったこと以外はほとんどイギリス版と同じ設定で、吸血鬼と狼男と幽霊の3人が一軒家に同居して、自分たちの忌まわしい能力にも関わらず普通の暮らしをしようとするものの、いろいろ災いが起きて…という内容。吸血鬼と狼男が病院で働いていることとか、吸血鬼の仲間たちが警察に潜り込んでいるところなんかもイギリス版と同じ。狼男を演じるのは「スーパーマン・リターンズ」でジミー・オルセンを演じてた役者か。

イギリス版はドラメディ扱いされてるわりにはあまりコメディっぽさは感じなかったものの、主人公たちが凡庸に暮らそうとする点が強調されてたのに対し、このリメイク版はもっとシリアスな雰囲気で耽美的な描写もあって、「バフィ」や「エンジェル」を観ているような感じ。最近の吸血鬼が出てくるドラマはみんな「トワイライト」に多かれ少なかれ影響されてる気がするなあ。

悪い作品ではないけど大変素晴らしい出来というわけでもないので、どのくらい人気が出るかは不明。日本で放送されるとしたらイギリス版とアメリカ版はどっちがいいですかね?

「LIGHTS OUT」鑑賞


ボクシングの世界を舞台にした、FXの新作ドラマ。プロデューサーにフィリップ・ノイスが名を連ねている。

ヘビー級のチャンピオンだったパトリック・”ライツ”・ライリーは数年前の微妙な判定の引き分け試合をもって引退し、妻とともに3人の娘を育てる一方で弟とボクシングジムを経営していた。しかしジムの経済状況は悪化するばかりで、自身のMRI検査ではパンチドランカーの兆候が見つかってしまう。生活費を稼ぐために借金取りの稼業にまで手を出す羽目になったライツだが、弟の画策により現役復帰をすることになる…というような話。

FXのドラマということで全体的なクオリティは高く、ボクシングの試合のシーンなんかもよく撮れている。「ザ・ワイヤー」の役者が何人か出ているのもいいな。ただし40代のボクサーの話というのがどこまで長続きできるのかというのが疑問ではある。尤も第1話の視聴率は低かったようなのでそもそも長続きしないかもしれないけど。

製作者の意図はアメリカの不況を反映した作品にしたいらしいんだが、主人公は金がないと言いつつもデカい家に住んで娘たちを私立の学校に通わせてるし、ボクシングジムの設備もずいぶん立派なんだよな。彼がチャンピオンだった期間は数ヶ月だけという設定だけど、はるかに偉大なジョー・フレージャーだって貧乏臭いジムで暮らしてるんですぜ。

スポ根ドラマなのかファミリードラマなのか社会派ドラマなのかいまいち分かりにくいところがあるので、話の焦点をもうちょっと絞ったほうがいいような気がする。