「9-1-1」鑑賞


FOXの運命を握るのはルパート・マードックであろうとも、ネットワークの顔となるのはライアン・マーフィーだ!ということで今年もたくさん出てくるであろうライアン・マーフィーの新作ドラマ。他にもプロデューサーとしてブラッド・ファルチャックやティム・マイナーが関わっている。

LAを舞台に、事故の現場に急行する救命士や警察(ファースト・レスポンダーと呼ばれる)の活躍を描いたもので、第1話では下水管に詰まった新生児の救助とか、強盗に押し入られた家の子供の救助など、まあいろんな事件が次から次へと起きています。

出演人物は緊急通報(アメリカでは「911」番)の電話に対応するオペレーターをはじめ、ベテラン消防士とその血気盛んな部下、冷静沈着な女性警官などが登場する。単に仕事での姿だけでなく彼らの私生活の様子も描かれ、オペレーターは痴呆症の母親の介護をしているし、ベテラン消防士は元アル中で、女性警官の夫はゲイとしてカミングアウトしたばかり、と皆が様々な悩みを抱えている。

出演者は結構豪華で、オペレーター役にコニー・ブリットン、消防士役にピーター・クラウザや俺の好きなケネス・チョイ、女性警官役にアンジェラ・バセットなどなど。アンジェラ・バセットってもうすぐ60歳なのにアクション多めの役を演じているのか。

まあ次から次へと緊迫した事件が続くので見てて飽きないし、役者もいい人たちが揃っているのだけど、これって20年近く前に「サード・ウォッチ」がやったことと内容は全く同じではないのか…?単に事件の一部始終を映すのではなく、もうちょっと捻りがあってもいいのでは。ケーブル局のFXではなく地上波のFOXの番組であるせいか、ライアン・マーフィーの作品にしては大味な印象を受けた。

なおディズニーによるFOX買収にあたって、マーフィーはディズニーCEOのボブ・アイガーから電話をもらって話し(それだけ彼は力を持っているのだ)、当面はFOXに残ることを決めたらしいが、この「9-1-1」は彼の作品にしては比較的凡庸かな、と思いました。

「明月幾時有」鑑賞


今年の第一弾は香港映画な。自分の詳しい分野ではないが、題材に興味があったのと良い評判を目にしたので。英題は「OUR TIME WILL COME」。

舞台は1941年、日本帝国軍占領下の香港。そこで抗日レジスタンスは日本軍の監視の目をくぐり、作家や芸術家といった知識人たちを中国本土へ脱出させる活動を行っていた。香港で母親と暮らす方蘭は小学校の教師を務める素朴な女性だったが、家の二階を作家の夫婦に貸していたことで、レジスタンスに彼らの脱出の手助けをすることになる。これがきっかけで方蘭はレジスタンス活動に身を投じていくことになる…というあらすじ。

方蘭は実在した女性で、いちおう事実に基づいた話であるという説明がされるものの、どこまでが史実でどこまでが脚色なのかはよく分かりません。レジスタンスの若きリーダーである劉黑仔(これも実在の人物)がやたら強くて、ピストル1つで憲兵隊の小隊を全滅させたりしてまして、まあそういうのは誇張されてるんでしょう。本国では香港の中国への返還20周年にかこつけて宣伝・公開されたらしいが、血湧き肉躍るプロパガンダ映画というよりも、戦争の流れに翻弄される市民たちの物語に焦点をあてた内容になっている。

2時間ちょっとの尺の作品だが最初の30分くらいは方蘭はあまり登場せず、脱出する作家夫婦の話が主に描かれている。そして1時間を過ぎたあたりから方蘭がレジスタンス活動を本格的に行っていくが、最初は抗日を呼びかけるビラ配りを手伝う程度だったのが、あれよあれよと言う間に支部長みたいな立場になっていて、最後には銃撃戦もお手のものになってたりするんだが、レジスタンスとして成長していく過程がまったく描かれないのはどうなんだろう。素朴だった少女が黒服をまとい、目がどんどん据わっていく姿はまるでカルト教団にハマった女性のようでした。

そんな方蘭に対して、彼女の活動に気づきながらも反対はできず、心配しつつ陰ながら手を貸す母親とか、日本人兵士と仲が良くなり、日本軍とレジスタンスのあいだで心が揺れる方蘭の恋人のほうが心情の描写は丁寧に描かれていたかな。あと方蘭の部下だった少年が、数十年後に一連の思い出を記者(監督自身?)に語る、という構造にもなっているのだが、そんなややこしいスタイルをとる必要があったのか?

監督のアン・ホイって香港映画のベテランで、母親は日本人という方なのね。方蘭役に中国を代表する女優のジョウ・シュン、助演にディ・ポンやウォレス・フォと、それなりの豪華なキャストということでいいのかな?日本からは占領軍の大佐役で永瀬正敏が出演していて、「パターソン」といいいろんな作品に出ているな。あとは音楽を久石譲が担当しておりました。

アクションシーンも派手なところと変なところがあるし(ライフル銃の弾が光って飛んでくる!)、前述のように方蘭の心理描写が足りない気もしたので、評判ほどの作品ではなかったように感じたものの、昨年に香港へ旅行したこともあって、いろいろ興味深く観ることができました。今年はアジア映画もきちんと観なければ。これは日本で公開されますかね?

謹賀新年


あけましておめでとうございます。

世界情勢がなんか不穏になって、世間にヘイトが蔓延してるような気がするなか、個人的に2017年はどことなく惰性で過ごしてしまったようなところがありまして、反省の余地ありです。年齢的に人生の中間点に来てるので、もっと新しいことに取り組んでいかないと損だよな。

昨年の元旦の書き込みを見ても「筑波山や赤城山に行く」とか「チャリティに寄付する」とか書いてるのに、ろくに実施しなかったものなあ(山は丹沢に初挑戦したけど)。よって今年は山小屋に泊まる登山とか、近所の炊き出しのボランティアを体験してみたいと思うのですが、ああ時間がない。何かの教室にも通いたいのですが。

仕事は6月くらいに大きな山が来そうで、しんどいといえばしんどいし、やりがいがあるといえばやりがいがあるし。面白い機会もありそうなんだけどね。でもその山が過ぎたあとのことも考えていかないとなあ。

何にせよ健康がすべての基本なので、皆様も健康には気をつけましょう。俺もあと2キロくらいは体重を絞って、血圧には気をつけたいところです。

相変わらずマイホームとか結婚といった要素とは無縁な一方で、漠然とした不安は抱えているものの、なるべく当ブログは更新していきたいと思いますので、今年もよろしくお願いいたします。

これが2018年の設定だったか…。

2017年の映画トップ10

今年はアメコミ映画(スーパーヒーロー作品)が多数公開された年であったことを考慮して、いわゆる『一般作』5位と『スーパーヒーロー作品』映画5位を分けて並べていきます:

<一般映画トップ5(こちらは順不同、観た順に並べる)>
・「メッセージ」
今年は真面目に考えさせられるSF映画の当たり年であった。下の「ゲット・アウト」もSFといえばSFだし。「猿の惑星」「シンクロナイズド・モンスター」なども良作だったが、映像の美しさや話の構造の巧みさもあってこれを代表に挙げる。

「T2 トレインスポッティング」
ちゃんと前作のクオリティに適うものになるのか?という不安を抱きながらずっと鑑賞していた作品であった。結論から言うと前作には届かないものの、前作のキャラクターたちがどう成長し、どう壁にぶち当たったかを丁寧に描き、きちんと話をまとめたという点で、他の続編(「ブレードランナー2049」「最後のジェダイ」など)よりも優れた作品であった。

「ディストピア パンドラの少女」
ゾンビ映画もネタが枯渇したかと思われた時に出てきた秀作。これも考えさせられるSF映画でしたね。世間的な評価はあまり高くないかもしれないが俺は好きだ。

・「ベイビー・ドライバー」
強いて今年のベストを挙げるならこれかな。冒頭からずっと勢いで飛ばす快作。音響のいい映画館で観たら本当に素晴らしかった。ケヴィン・スペイシーのスキャンダルが発覚する前に公開されて本当に良かったね…。

「ゲット・アウト」
これもアイデアで勝った作品。人種間の緊張という時事ネタをうまく昇華させてホラー映画に落とし込んでいる。古典的なホラーのプロットの現代版といえば「エイリアン:コヴェナント」もそうなのだけど、あっちよりずっとよく出来ていた。

あとは「シンクロナイズドモンスター」「ムーンライト」「ダンケルク」「A Ghost Story」などが良かったです。

<スーパーヒーロー作品トップ5(こちらは評価順に>
・「LOGAN/ローガン」
フランチャイズありきのスーパーヒーロー映画のなかで「シリーズの終焉」をガツンと持ってきた傑作。ヒーローが老いて死ぬということはどういうことかを、真っ向から描いていた。

・「スパイダーマン:ホームカミング」
マーベル・シネマティック・ユニバースの外で「ローガン」の様な傑作が作られてしまうと、スパイダーマンをMCUに入れてしまうのはどうよ、という不安もあるのだけど、今まで以上に若々しいピーター・パーカーの奮闘はやはり見応えがありました。

・「 マイティ・ソー バトルロイヤル」
・「ワンダー・ウーマン」
この2つは3位タイ。「ソー」は軽いノリで楽しめたし、「WW」は女性監督ならではの繊細な描写が秀逸であった。どちらも戦闘シーン『以外』のところが面白かったのも共通していて、そろそろアクションに時間をかけないアメコミ映画が出てきても良いと思う(主人公が最後に勝つこととか、もう分かるでしょ?)。

「ジャスティス・リーグ」
興行的にも批評的にもイマイチだったけど、自分の好きなキャラクターたちが集結するのはやはり爽快であった。ワーナーはこの失敗にメゲずに、優れたDCコミックス映画を作って欲しいところです(ザック・スナイダーは外してな)。

「レゴバットマン ザ・ムービー」
ギャグアニメなので評価しづらくて5位にしたけど、いろんな映画の悪役が勢ぞろいする展開は凄いと思ったし、従来のバットマン映画以上にバットマンの本質を鋭く突いた作品であった。

この下に「ガーディアンズ2」があって、その下に「ドクター・ストレンジ」といったところ。「インヒューマンズ」は論外。

評判のいい「アトミック・ブロンド」や「グッド・タイム」は未見。「ジョン・ウィック チャプター2」や「スリー・ビルボード」はまあまあかな。「マザー!」は俺じゃなくても別の人がきちんと評価してくれるさ!

邦画は毎度のことながら、Netflixをはじめとする配信独占の作品をいろいろ取りこぼした1年であった。来年はさらにこれが細分化されるんじゃないですかね。あとディズニーのFOX買収により製作される映画の本数が減少することが予想されますが、FOXが独自のスタジオとして映画製作ができるのは来年いっぱいになるのかな?スタジオ上役たちのセクハラ問題とあわせていろいろ再編の波が来ていますが、これがより良い作品が生み出されるきっかけになることに期待したいところです。

「WORLD OF TOMORROW EPISODE TWO: THE BURDEN OF OTHER PEOPLE’S THOUGHTS」鑑賞


タイトルが長すぎてきちんと表示されないかな?「WORLD OF TOMORROW EPISODE TWO: THE BURDEN OF OTHER PEOPLE’S THOUGHTS」です。

ドン・ハーツフェルトにおる、アカデミー賞候補になった短編アニメーション「「WORLD OF TOMORROW」の続編。22分ほどの短編な。

前作の主人公である少女エミリーのもとに、また未来のエミリー(前作とは別のもの)が現れる。エミリー6と呼ばれる彼女はエミリーの第三世代のクローンのバックアップであり、エミリーの記録を保持するために作られたのだが、その記憶が不完全なものであったために、未来からエミリーに会いに来たのだという。そしてエミリー6はエミリーの記憶を得るために二人の記憶を連結させ、二人はお互いの記憶の世界をさまよっていく…というあらすじ。

話の設定は前作とよく似ているものの、直接的なつながりはなくて、前作がどちらかといえば未来のエミリーの外部の環境を扱ったものだったのに対し、今回はエミリー6の記憶が主なテーマになっている。エミリー6はエミリーの記憶の容器として造られたものの、彼女自身の人生もまた経験しており、幼少時に仲の良かったまた別のエミリーのクローンの話とか、ダンサーになりたかったという夢などが語られていく。現在のエミリーが経験したことは彼女の記憶となってエミリー6にも瞬時に伝わり、さらにはエミリー4とか7といった別のクローンにも伝わる、というタイムトラベルの原理を用いた入れ子のようなプロットがあり、さらには記憶をテーマにした哲学的な話が語られて、その可愛らしい絵柄とは裏腹に内容はかなり難しかった…。もういっかい見直してみます。

エミリーをはじめとするキャラクターは相変わらずの単純な線で描かれたハーツフェルト特有のスタイルだが、今回は前作以上にCGの背景が美しくなっていて、星のきらめきとか記憶の世界の花の描写などが大変素晴らしい。これ映画館のスクリーンで観ても迫力あるんじゃないかな。

死にゆく世界に生まれ、エミリーの記憶のなかに自分の存在を見出そうとするエミリー6のもの哀しさがきっちり描かれた、コミカルなようでしっかりとしたSFアニメーションであったよ。前作はエミリーの声をハーツフェルトの4歳の姪っ子があてていたが、今回は彼女は5歳になってたそうで、これからも彼女の成長にあわせた続編を作っていく可能性をハーツフェルトは示唆しているとのことなので、今後のエミリーの冒険がどのようなものになっていくか興味深いところである。