「TWICE UPON A TIME」鑑賞


というわけで今年もやってきました「ドクター・フー」のクリスマス特番。これがないと俺のクリスマスは始まらんのよ(もう終わったけど)。今回は12代目ドクターを演じるピーター・カパルディの登場する最後の回、さらには長らくショウランナーを努めてきたスティーブン・モファットも降板する回ということもあり(脚本は当然モファット)、「記憶」をテーマにした今までのシリーズを回顧するような話であった。以降はネタバレ注意。

話は前のシリーズ10からそのまま続いていて、リジェネレーションの時期が間近に迫っていることを悟ったドクターは、それでも肉体の再生を拒んで南極へと到着する。そしてそこで出会った老人こそが、誰であろう初代ドクターであった。彼もまた(初の)リジェネレーションを拒んでターディスで南極に来ていたのだ。さらに二人は第一次世界大戦の戦場から迷い込んできた一人のイギリス兵に遭遇する。彼ら3人の出会いは時間の異常な乱れによって生じたものであり、その乱れを感知した巨大な宇宙船に彼らは捕獲される。その宇宙船で元コンパニオンのビルと再会するドクター。彼らを捕獲したのは人々の記憶を管理する存在「テスティモニー」であり、ドクターたちが兵士を元の戦地へ返すことを要求するが、彼を死地に戻すわけにはいかないとドクターはそれを拒み、宇宙船から脱走してテスティモニーの正体を探ろうとするが…というあらすじ。

初代ドクターを演じるのは故ウィリアム・ハートネル…では当然なくて、「An Adventure in Space and Time」でも同じ役を演じたデイビッド・ブラッドリー。昔ながらの頑固親父というノリの初代ドクターに対して、もっとモダンな12代目がいい凸凹コンビ感を出していまして、初代の女性に対する「政治的に正しくない」発言に慌てる12代目がいいぞ。彼らに出会うイギリス人兵士を演じるのが、裏方としても役者としても常連のマーク・ゲイティス。彼もモファットともに番組を去るという話があるので、ここで最後のお勤めでしょう。元コンパニオンのビルとしてパール・マッキーが再登場するほか、サプライズゲストも出てきます。

まあこのようにモフェット・フーの集大成というか同窓会のような内容なので、サスペンスとかはあまりなし。テスティモニーも悪役というわけでもないし。前のシリーズでXXしたビルを再登場させた手段が、50周年でローズを再登場させた方法の使い回しのような気もしたけど。あと俺が年をとっただけかもしれないが、数年前のプロットとか覚えてないのよ…。「宇宙最大のデータベース」として登場した彼とか、誰だったっけという感じだったし。そういう過去のプロットは、よくも悪くも新しいショウランナーが就任することで一掃されるのかな。あと毎度のことながらCGのキャラクターがショボいような。BBCそこらへんにもうちょっとお金かけようよ。

というわけで全体的にまったりしたエピソードであったが、ドクターが過去の自分と話し合い、自分の存在意義を再認識してリジェネレーションを受け入れる流れはよく描かれてましたよ。ラストのモノローグはウルっとくるほどの出来でございました。

こうして12代目は去り、次にやってくるのは13代目!初の女性ドクターだよ!ジョディ・ウィテカー演じる13代目は例によって最後にちょっと出てくるだけだが、多くの視聴者に好意的に迎えられているみたい(ヨークシャー訛りがキツいが)。また今までとは違った新たなドクターが楽しめそうなので、来年の秋まで待つのが残念ですが、期待しておきましょう。

「A Ghost Story」鑑賞


ことし高い評価を映画を得た作品。監督のデヴィッド・ロウリーって、ディズニーの「ピートと秘密の友達」なんてメジャー作を撮ってる一方で、「UPSTREAM COLOR」の編集をやったりしてる人なのね。以下はネタバレ注意。

舞台となるのはテキサスの郊外にある小さな平屋。そこには若いミュージシャンの夫とその妻がつつましく暮らしていたが、ある日夫は交通事故で命を落としてしまう。だが夫は幽霊として蘇り、「あの世」に行く機会も断り、悲観にくれる妻の待つ家へと戻る。しかし妻の目に夫は見えず、夫もまた幽霊として妻を眺め続けることしかできなかった。やがて妻は家を去るものの、夫の幽霊は家に留まって、ひたすら何かを待ち続ける。そして家にも様々な変化が訪れ、幽霊も時を超えて物事を眺められるようになり…というあらすじ。

幽霊が出てくるといってもホラーではないよ。かといって「ゴースト」のようなロマンチックな話でもなくて、夫の幽霊の外見は上のポスターにあるように、白いシーツをかぶっただけの姿。いちおう物を操ることはできるものの、声を発せず、妻とコミュニケーションをとろうともせず、ただ妻の姿や家に起きる変化を傍観していく。幽霊になりたての頃は妻の後に来たヒスパニックの家族が好きになれなくて、ポルターガイスト現象を起こしたりするものの、そのあとは家の住人がパーティーを開こうとも動ぜずに、ずっと彼らを眺めているのだ。

このように、移り変わる物事を幽霊がじっと見守るという内容の作品。映像の画角が1:33という正方形に近い比率になっており、さらに画面の四隅が丸っこくなっていて、むかしの8ミリカメラによる家族の記録映像を見ているような気分になるのも効果的に働いている。話の展開もゆっくりしていて、悲しんだ妻がパイをやけ食いする姿を9分間もずっと見せられたりするので、まあこれを退屈と思う人もいるだろうな。幽霊が家にずっと留まり、時間だけは過去にも戻って家の歴史を目にするあたりは、アラン・ムーアやイアン・シンクレアの作品に出てくるサイコジオグラフィーの概念を彷彿とさせました。

主役の夫と妻には名前すら与えられておらず、それぞれ「C」と「M」という役名がつけられているだけ。二人のラブストーリーでありながらも、彼らについて多くの説明はされず、ひたすら淡々とした関係の描写が続くのだが、それがただ彼女を待ち続ける幽霊の姿にうまく反映されてるなとも思いました。夫を演じるのが昨年アカデミー賞を受賞したケイシー・アフレックで、妻を演じるのがルーニー・マーラ。ちなみに幽霊の「中の人」を演じてるのは必ずしもアフレックだけではないらしい。あとミュージシャンのボニー・プリンス・ビリーがパーティの客人役で出ていて、彼が文明の終わりについて饒舌に語るシーンだけなんか浮いていて好きになれなかったな。

批評家には評判が良かった一方で、万人受けする作品ではないと思うが、愛する人を眺める幽霊が哀しくて個人的にはいい作品だと思いました。特に話の終わり方が秀逸であったよ。

「BUSHWICK」鑑賞


デイヴ・バウティスタ主演のアクションサスペンス。あまり期待しないで観たら結構面白かった。

舞台となるのは題名通りニューヨークはブルックリンのブッシュウィック地区。そこに住む女学生のルーシーは恋人と地下鉄の駅を出ようとしたところ、突然地上からは銃撃戦の音と爆発音が鳴り響き、火だるまとなった人物が飛び込んできた。慌てて二人が出口に向かうとそこは戦場のようになっており、何者かの集団と住民たちのあいだで銃撃戦が行われていた。ルーシーの恋人は様子を伺いに外へ飛び出すものの、爆発に巻き込まれて死んでしまう。一人となったルーシーは自宅を目指すものの、重武装した兵士やギャングに襲われ、路地裏の小さな地下室へと逃げ込む。そこに住むのは元兵士のスチュープであり、彼に助けられたルーシーは二人で彼女の家へと向かい、混沌とした物事の真相を把握しようとするのだが…というあらすじ。

ネタバレになるけど言ってしまうと、ブッシュウィックに侵攻してきたのはテキサスを中心とする南部の市民軍で、ふたたびアメリカ合衆国から離れることを大統領に認めさせるために北部の州を襲撃したのだという。ブッシュウィックが狙われたのは非白人が多いということと、銃規制が厳しいから住人の反撃には合わないだろうと推測されたという説明がされるのだが、そこはアメリカ、ブルックリンの住民だってみんな銃は持ってるのだ!ということで後半は市民軍に抵抗する住民の市街戦が繰り広げられていく。銃と火炎瓶で戦うユダヤ教徒がなんかカッコいいぞ。

最近流行りの、ゲーム視点的な長回しシングルショット風のスタイルで全編が撮られており、まあところどころ編集が入っているし、「トゥモロー・ワールド」ほどの凝った長回しは無いものの、冒頭の地下鉄のシーンなどでかなり効果的に緊張感が盛り上げられている。

スチュープを演じるのがデイヴ・バウティスタ。「ブレードランナー2049」でもそうだったけど、肉体的なピークを過ぎた、どことなく陰のある大男を好演しており、ここらへんはアクションに偏重しがちな他のWWE出身の俳優たち(ロック様含む)とは一線を画していますね。そんな彼と組むルーシーを演じるのが「ピッチ・パーフェクト」のブリタニー・スノウ。それ以外はそんなに有名な役者は出ていないかな。

まあB級映画かといえばB級映画だし、ラストの展開もなんか落とし所を間違えているような気がするのだけど、思っていた以上に楽しめる作品であったよ。もし日本のレンタル屋とかでも見かける機会があったら、鑑賞を一考することをお勧めします。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」鑑賞


ネタバレせずに語ることは難しいけど、まだ観てない人も多そうなので白文字にしますね。個人的にはどうもしっくりこない内容であったよ。
(以下白文字)

・これ言ったら元も子もないんだろうけど、ファースト・オーダーってなんであんなに強大なんだ?前回の銀河帝国だって武器や軍艦は共和国のものをそのまま流用してあそこまで大きくなったのに、帝国の残党であるファースト・オーダーはたかだか30年で帝国以上の装備を揃えて、共和国軍を完全に駆逐する寸前まで行ってるわけ?まあ話の都合上、強大な敵が必要だったのは分かるのだが圧倒的な戦力の差にはずっと疑問を抱きっぱなしだったよ。

・さらにカイロ・レン(ベン君)には10年以上前からスノークの魔の手が忍び寄っていたわけで、これを考えるとルークたちの勝利してる期間て本当に短かかったなあ。これでスノークがいかに恐るべき敵であるかがきちんと描かれればよかったのに、結局はカイロ・レンのかませ犬であったよ。じゃあ代わりにカイロ・レンいかに恐るべき敵であるかが描かれるかと思いきや、相変わらず猫背の情緒不安な若造で、スノークの親衛隊を倒すのに苦労してる有様だし。あんなのがリーダーで大丈夫かファースト・オーダー。「ローグ・ワン」でダース・ベイダーの無双っぷりがきちんと出ていたばかりに、相変わらずの強大な悪役の不足が嘆かわしい。あとでっかい大砲をラストの脅威に持ってくる展開、そろそろやめませんか。

・そんなファースト・オーダーに追われる共和国軍ですが、後ろから撃たれながら全速力で逃げるという、文字どおり尻に火がついた展開に。主人公たちを切羽詰まった状態に置くというのは間違いじゃないと思うんですよ。ファースト・オーダーがもっと前にジャンプすればいいんじゃないかとか、ジャンプがあんな強力な攻撃方法になるならとっくに武器化されてるよね、と突っ込むのは置いておいて。ただ緊迫した状況にありながら、その解決案が「カジノ惑星に人を送る」というのはアンバランスなのではないか。舞台がカジノ惑星になったとたんに話が間延びするのですもの。そしてそこに登場する、ベネチオ・デル・トロのDJ!なんかスゴいキャラクターなのかと思ったらそうじゃなかった!彼、あれで終わりじゃないよね?あとでどこかで話が回収されるよね?そうでないと出た意味がないのでは。

・キャラクターの点では旧作のキャラクターたちにはふさわしい場が与えられた一方で(アクバー提督は除く。あれちょっとひどくないか)、フィンの立場が結構微妙だった印象を受けた。前作はフォースの覚醒していないレイと同等の立場でいいコンビだったものの、今回はレイが完全に主役になって、ダメロンもリーダー格になったので手持ち無沙汰な感じが。ジェダイというエリートではなく庶民的なキャラクターとしての視点を与えてくれるのはいいのですが、その割にはどうも前作に比べて活躍してなかったよな。

・スター・ウォーズ作品としては最長の尺を持ちながらも、アクションが次々と続くので決して中だるみするような内容ではない。ただその一方で話の展開は意外なほど少なくて、レイはジェダイとして完全には覚醒せず、上述したようにカイロ・レンも究極の悪役にはほど遠いし、そもそもカジノ惑星っていく必要あったののか?という気はするよね。3部作の真ん中として、話の設定にも結末にも時間を割く必要はない余裕があったのは分かるが、今後のディズニーによるSW映画(エピソード9で終わる訳はなく、永遠に続く)は、これからみんなこんな内容になっていくのかなと一抹の不安を抱かずにはいられなかった。

・とはいえラスト30分のクライマックスは手に汗握る面白さなんだけどね。ジェダイじゃなくてもフォースは使えるとか、「スター・ウォーズらしさ」(それが何であれ)の固定観念に果敢に調整したという意味では賞賛されるべき作品でしょう(実際はエピソード1〜3がその役目を果たしているのだが、ファンのお口には合わなかったようで)。次作はまたJJ・エイブラムスが戻ってくるらしいので、例によって過去の作品を焼き直した、あまり冒険をしない内容になるだろうから、今はこの、次はどうなるかわからないという気持ちを吟味しておきましょう。

「HAPPY!」鑑賞


グラント・モリソンがライターのイメージ・コミックスの作品を原作にした、SYFYの新シリーズ。

ニック・サックスはカタブツで有能な刑事だったが、汚職事件に巻き込まれて屈辱的な退職に追い込まれた過去をもち、今はヒットマンとなって自暴自棄な生活をしていた。それでも腕の立つ彼はクリスマスの近づいた晩に殺しの依頼を片付けるものの、その際に狙撃されて救急車に担ぎ込まれる。精神が朦朧とするなかで彼の前に現れたのは、青くて翼を持った陽気なユニコーン、ハッピーだった。ニックにだけ見えて、彼に語りかけてくるハッピーを幻覚の産物だと見なそうとしたニックだったが、ハッピーは彼の知らないことも知っているふしがある。ハッピー曰く、彼はヘイリーという少女のイマジナリーフレンドであり、サンタに扮したサイコ野郎にヘイリーが誘拐されてしまったため、訳あってニックに助けを求めてきたのだという。そんなハッピーはやはり幻覚なのではないかという疑念を抱きながらも、病院から脱出しようとするニック。しかし彼が殺しの相手から聞かされた、財産にアクセルするパスワードを狙って、別の殺し屋たちがニックの命を狙うことになり…というあらすじ。

原作コミックのアートを担当したのが「トランスメトロポリタン」や「ボーイズ」で知られるダリック・ロバートソン。なんつうか下品で暴力的なスタイルを特徴とした人でして、コミックも小汚い格好のニックが人をブン殴っていくという、グラント・モリソン作品にしては比較的異質な内容であったのを記憶している。

その一方でモリソン自身が第1話の脚本を共同執筆していることもあり、話の展開はかなりコミックに沿ったものになっていた。病院でニックを狙う殺し屋なんかはうまく脚色がされて話に厚みが出ているし、「ハードコア・ヘンリー」を彷彿とさせる過激なカメラワークも話の内容によくマッチしている。第1話で原作の4分の1以上を消化しているので、これからはどんどんオリジナルの展開になっていくのかな?

主役のニックを演じるのはクリストファー・メローニ。「ロー&オーダー:SVU」のシリアスな刑事役で知られる役者だが、もともとはコメディ畑の出身ということもあり自堕落なニックがよく似合っている。そんな彼を翻弄するCGのユニコーン、ハッピーの声を務めるのがパットン・オズワルドで、まあオズワルドの出てる作品にハズレはないよな。あとは別の殺し屋役でパトリック・フィッシュラーなども出ています。

まあこの高いテンションをどこまで保持できるかがシリーズ存続のカギなんだろうが、第1話は結構面白かったですよ。これをきっかけにグラント・モリソンの作品の映像化がもっと進まないかな。ロバート・カークマンくらいの扱いは受けてもいいと思うんだが。