「THE BIG C」鑑賞


不幸せな女性を演じされば右に出る者のいないローラ・リニーが、これまた不幸せな女性を演じるショウタイムの新作ドラマ。公式サイトで第1話が観られるぞ(IPアドレスをゴニョゴニョする必要あり)。

リニーが演じるキャシーはミネアポリスで高校教師として働く女性で、子供っぽくてワガママな夫(オリバー・プラット)を家から追い出し、クソガキの息子とともに自分なりの生活を送ろうとしていた。しかし検診により彼女は末期の乳ガンであることが判明し、彼女の人生は一変することになる…というのが大まかなプロット。

ガンに侵された主人公が残された人生を好きなように生きようとする、というコンセプトは「ブレイキング・バッド」に似てなくもないが、当然あれよりかはツマらなくて、涙目のリニーが周囲の人にブチ切れるだけの、なんかダウナー気味の展開に終始しているような。第1話の監督はビル・コンドンだけど、同じくリニーが出ていた「キンゼイ」ほどのぶっ飛んだ展開はなかったな。

あと「プレシャス」のガボレイ・シディベが準レギュラーとして出演してるけど、なんか彼女のシーンだけ後からとってつけたような、あまりメインのストーリーと関係ない扱いだったような?そしてウィキペディアによるとイドリス・エルバやブライアン・コックス、リーアム・ニーソン(キンゼイ先生!)といった豪華キャストがゲスト出演するらしいけど、彼らに見合うほどの番組になるのかね?

「THOR」トレーラー


(とりあえずここでまだ観れそう)

映画化が決まった時点から思ってたのだが、日本の配給会社は「THOR」の邦題を今から真剣に考えとかないといけないんじゃないだろうか。早々にそうしとかないと「ソウ」と区別がつく人はそうそういないだろう。なんちゃって。「マイティ・ソー」とか「雷神ソー」とか、あるいは読み名を変えて「雷神トール」とかにするとか。

ちなみにデストロイヤーって「魔人ハンター ミツルギ」に似てないか?

「エアベンダー」鑑賞


せっかく上質の素材をお膳立てされて、いくらでも優れた作品になる可能性があったのに、あらゆる点で失敗してしまったような作品。その責任はやはり脚本・製作・監督を務めてるM・ナイト・シャマランにあるよなあ。

脚本はまだしも演出とキャスティングが不味い。主人公のガキンチョは物語を通して成長していくさまがまっとうに描かれず、最後になっても眉間にシワをよせてオドオドしているだけ。俺は原作を未見なので、本国で問題になった人種が異なるキャスティングは気にならなかったけど、エスキモーの格好をした白人というのは違和感があったかな。そして敵役にはデーヴ・パテールにアーシフ・マンドヴィ、クリフ・カーティスという実に渋い面子を起用しておきながら、ことごとくミスキャストになっているのはどうしたことかと。パテールは「スラムドッグ・ミリオネア」の素朴な青年のイメージが強すぎるし、マンドヴィは過去にもシリアスな役を演じたことがあるとはいえ、今では「デイリーショー」でコメディやってる人ですからね。あのカン高い声で悪役を演じられても全然凄みがないのよ。

彼ら以外の出演者もみんな手を抜いたようなセリフまわしだし、無駄なクローズアップが多用されているうえ、どうも全体的にせこせこしていてストーリーにメリハリがないんだよな。だから城塞とかが出てきてもスペクタクル感がなくて、箱庭のごとき雰囲気を与えているんじゃないかと。そして「トロイ」を観た時も思ったが、城塞戦を映画で描こうとする人は「王の帰還」を100回くらい観て、攻める側の脅威と守る側の不安をきちんと醸し出さないとダメだよね。そもそも海に面した城塞に船でやってきた連中が、地中から城塞に潜入するのっておかしくないか?

実はシャマランの映画を観るのって「サイン」以来なので、ここ数作で手法がどう変化したかは把握してないんだけど、昔はオチこそひどいものの「何かすごいことが起きているに違いない」という雰囲気を盛り上げて人を引きつける、いわば山師的なサスペンス作りの腕前は一級の人じゃなかったっけ?この作品ではそうした才能が微塵とも感じられなかったぞ。ただしシャマラン作品ということで弱冠の期待をしてしまったところもあるけど、無名の監督による無難な子供向けアクション(春休みの昼間にテレビで放送されるようなやつ)として観ればそこまで悪くはないかも。あと画面が暗いので3Dで観るのは止めたほうがいいかもしれないが。

唯一の収穫は、原作のアニメは面白いかもしれないということが分かった点かな。キャラクター設定とかストーリー自体は興味深いところがあったので。今度機会があればチェックしてみよう。

「SHERLOCK」鑑賞


言わずと知れたコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」ものを現代風にアレンジしたBBCの新作ドラマ。90分が3本のミニ・シリーズになるのかな?

アフガンでの戦争でPTSDにかかり帰国した軍医のジョン・ワトソンは、ロンドンでの下宿と同居人を捜していたところ、シャーロック・ホームズという無愛想な青年を紹介される。彼はその明晰な頭脳を活かし、難事件に対して警察に助言を行う自称コンサルタントであった。そして一見無関係の男女が次々と服毒自殺を遂げるという怪奇な事件が発生し、ホームズはワトソンと共に事件解決のため奔走するのだが、彼らを監視する人物が現れて…というのが第1話のプロット。

「A STUDY IN PINK」というエピソードタイトルが示すように「緋色の研究」をベースにしたストーリーになっていて、携帯電話やタクシーといった現代のアイテムが巧みに取り込まれた上質のミステリーになっている。ホームズが発見する情報がいちいち口頭で説明されたりせず、文字情報として画面に表示される仕組みも功を奏しているかと。

ベネディクト・カンバーバッチという、いかにもな名前を持つ役者が演じる現代版ホームズはジェレミー・ブレットのバージョンよりも遥かに横柄で人付き合いが悪く、猟奇事件の発生に喜びを得ることから、彼に嫌々ながら助言を求めるレストラーデ警部の部下たちには「サイコ野郎」と呼ばれている始末(これに対し本人は「僕は高機能社会病質者だ!」と答えている)。「今のロンドンではタバコもろくに吸えない」と言って、パイプをくゆらせる代わりにニコチン・パッチを腕にあてて考えをめぐらせる姿も面白い(ただしドラッグをやっているような描写はある)。ただし視聴者が引いてしまうほど冷酷にはならず、その奇抜な振る舞いにもどこかユーモラスなところがあるのは、ダークなドクター・フーを連想させるかな。ちなみにこのシリーズの原案者は、「ドクター・フー」を現在指揮しているスティーブン・モファットだよ。

また「オフィス」のティム役で知られるマーティン・フリーマンもワトソンを好演していて、原作よりも思慮深く、ホームズの行動に翻弄されながらも自分なりの方法で彼を助けようとするワトソンをうまく演じている。彼自身も無意識のうちにスリルを求める人間になっているという描写が巧いな。

ラストの謎解きが少しウヤムヤになっているところはミステリー・ファンにとっては不服だろうが、ホームズを狙う「あの男」の存在が示唆されて、今後の展開にも非常に期待が持てる。ぜひ日本でも放送してほしい良作。

「プレデターズ」鑑賞


とりあえず以前に予想したことの結果を白文字で書きます:

ノーランド以外ピッタリ当たったじゃないかよ!それだけクリーシェ満載の映画だったということか?

でも個人的にはそこそこ楽しめた。大げさな音楽やあまり深みのない脚本とかが逆に功を奏して、往年のフォックスのSFアクション映画を彷彿とさせているというか。1800円払って劇場で観るべきかは微妙だが、日曜洋画劇場で放送されるとみんな観そうだとか、創元推理文庫からゲームブックが出るんじゃないかとか、なんかそういうノスタルジックなものを感じさせる出来になっていた。

もちろん脚本は穴だらけでツッコミどころ満載だし、敏腕の兵士たちがコンパスや双眼鏡も持ってないのかといった疑問はいくらでも出てくるんだけどね。早くも続編の話が持ち上がってるらしいが、何をやっても矛盾が増えるだけの展開になりそうな気がする。「気付いたら異星にいた」なんて強引な展開はこれ1度しかできないでしょ(もっともフォックスのことだからDVDムービーで死ぬほど搾取するかもしれないが)。

演出は可も不可もなし。エイドリアン・ブロディ演じる主人公が万能すぎるかな。もっと非肉体派というか臆病なタイプかと思ってたんですが。あと各人のキャラは立ってるんだけど、もうちょっと性格描写とかを深く掘り下げても良かったんじゃないかと。特にあの医者とか。2人くらい登場人物を削って残りの人物に厚みを与えたほうが、彼らが犠牲になったときのインパクトが大きくなったんじゃないかな。

ちなみにこの映画の教訓は「日本人はプレデターと同じくらい強いけど、ユダヤ人はもっと強い」ということでいいのかな?