VHSは死んだのか?

米ヴァリエティ誌に「VHSテープの追悼記事」が載っていた。孤独な死を迎えたんだとさ。

おふざけ記事に反論すんのも何だが、俺はちょうど新しいビデオデッキを購入しようかと考えていたわけで、まだまだVHSだって捨てたもんじゃないと思うんだけどね。確かにDVDに慣れてしまうとあのサイズがやたらデカく感じられるし、カセットテープや8トラックに比べて愛着の感じられない無愛想なメディアではあるけれど、まだDVD化されてない映画って意外と多いし、たとえDVD化されていても近所のレンタル屋にVHSしか置いてなかったら、そいつを借りて観れば安上がりだと思うんですけどね。あと最近はDVDが完全に普及したおかげで古本屋なんかでは中古ビデオが200円くらいで投げ売りされてて、そこから意外な掘り出し物が発見できたりするのも面白いといっちゃ面白いんだが。

まあいずれは駆逐されていくメディアなのだろうけど、今の段階で死んだとみなすのは、マーク・トゥエインの言葉を借りるなら「私が死んだという報告は、えらく誇張されたもんです」ということなんじゃないの。

「The Number 23」なる映画

c0069732_23154927.jpgあらゆる重要な事件・事象には「23」という数字が関わっているという説、通称「23エニグマ」は確かウィリアム・S・バロウズが最初に提唱してロバート・アントン・ウィルソン(元気?)が世に広めた、個人的に好きな陰謀論(?)の1つなんだが、これをテーマにした「The Number 23」なる映画がジム・キャリー主演、ジョエル・シューマッカー監督で作られたそうな。

トレーラーしか観てないんで具体的にどんな作品になるかいまいち不明だけど、基本的には陰謀論をベースにしたスリラーみたい。でも23エニグマって陰謀よりもシンクロニシティに近いような、「あれもこれも23って数字が関連してるんだよ。こわいねー」と軽く(?)話のネタにするようなものであって、これで1本映画を作るのは結構キツいものがあると思うんだが。むかしその名も「23」というドイツ映画があったけど、あれも最初は陰謀論から始まって最後は全然違うところに話が到着して終わってたっけ。まあそれでも興味の引かれる映画ではある。ジム・キャリーは傑作「エターナル・サンシャイン」でも明らかなように、シリアスな役をやっても優れた役者だと思うし。

しかしジョエル・シューマッカーって21世紀になっても「バットマン&ロビン」をすぐ引き合いに出されてて、なんか可哀想だよなあ。あれは確かに駄作だったけど、例えば「デアデビル」とかに比べれば悪くなかったじゃん。

「プレスリー VS ミイラ男」だって

BUBBA HO-TEP」ってやっと日本で劇場公開されるのか。しかも邦題が「プレスリー VS ミイラ男」だって。悪い邦題ではないけど「プレスリー&JFK VS ミイラ男」というのはやはり語呂が悪かったんだろうか。というかJFK(?)を演じたオジー・デイビスってけっこう前に他界しちゃったじゃん。

4年も前の映画が劇場公開されるのって近年では珍しいな。まあbetter late than neverで、面白い作品がきちんと注目されるのは良いことですが。この映画と似てるといえば似てる大傑作「ショーン・オブ・ザ・デッド」が日本では劇場公開されなかったのが、いまだに悔やまれるところです。

「ボラット」に見る市場調査の無意味さ

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先週末の全米映画興行収入はサシャ・バロン・コーエンの異色コメディ「ボラート」が初登場1位に輝いたとか。ホリデーシーズン前で2640万ドルという数字は決して悪いもんじゃないだろう。まずはめでたしめでたし。

でもさ、実はこの映画って公開の直前に上映館を半分に減らされてるんだよね。配給会社の市場調査により「この映画はアメリカ人にはウケないだろう」という結果が出されたからなんだけど、その調査は見事にハズれたわけだ。後になって配給会社の人は「少ない館で公開することによって話題性が高まった」みたいなことを言ってるらしいが、ホントかね。単館系のアートシネマじゃあるまいし。いずれにせよ事前の市場調査が当たらなかったということは事実だと思っておいていいだろう。

そしてこれは映画ビジネスというものが、いかに予想もつかない動きをするかを端的に表している。スタジオが自信を持って送り出した作品が大コケするのは年に幾度となく目にする光景だし、その逆に意外なヒットを飛ばす作品も少なからずあるわけで、正直言って映画なんてバクチですよあんた。極端な話、公開日に天変地異(テロとかハリケーンとか)が起きて客足が鈍るような可能性もあるわけだし。

だから変に市場調査とかに時間と労力をかけなくても、とにかく優れた映画を作って、それをちゃんと公開して、コケたら「まー仕方ないねー」で笑ってすませるようなスタイルが望ましいと思うんだが、そういうのはビジネスと呼ばないか。まあ数字に疎い俺のやっかみもあるのかもしれないが、あんまり統計とか眺めててもヒット作なんて生まれんよ、と思ってしまうのです。

ちなみにボラットってネタの使い回しがやけに多くないか?キャラクターの性格に統一性を持たせるためとはいえ、「ジョージ・ウォルター・ブッシュの父親はバーバラ!」というネタをここ1週間で3回は聞かされたぞ。

<追記>
上記の件は「AVクラブ」が相変わらず簡潔にうまくコメントしていた。さすが。下の表にあるように、どの映画サイトも「ボラート」がここまで成功するとは思ってなかったというわけだ。
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エイドリアン・シェリー他界

ハル・ハートリーの初期の傑作「トラスト・ミー」で、妊娠して家を追い出される少女を演じたエイドリアン・シェリーが亡くなったそうな。しかもシャワーから首を吊ってる姿で発見され、自殺か他殺かはっきりしない状況らしい。うわー。

決して有名な女優ではなかったけど、「トラスト・ミー」で見せた健気な演技は非常に印象的だったのであります。合掌。

<追記>
19歳の労働者による他殺だと判明したとか。あーあ。悲しいことです。