「ミニミニ大作戦」鑑賞

むろんオリジナルのほう。マイケル・ケインはすごく好きな役者なのですが、彼の若い頃の作品て殆ど観てなかったりするのです。

話の内容自体はそんなに特筆すべき点はないんだけど、ストーリー展開が早いうえに粋なユーモアが満載だし、セットもキャストもオシャレーといった感じで観てて飽きさせない。この映画の代名詞的なカーチェイスも、金塊を積んだ車があんなにジャンプできるかよという点に目をつぶれば非常に面白い。

同じ強盗ものでも「オーシャンズ11」(リメイクのほう)は強盗側のプランが完璧すぎてちょっと拍子抜けしたけれど、こっちは手下がいささか頼りない連中ということもあって最後までスリルが尽きないものになっている。文字通りクリフハンガーで終わるラストもいいねえ。

あと驚いたのは、内容がやたら露骨に反ヨーロッパというか、斜陽になったイギリス帝国をナメんじゃねえぞ!というものになっていること。ノエル・カワード演じるエリザベス女王が大好きな黒幕のオヤジなんて、いまのイギリス映画じゃ絶滅寸前のキャラですぜ。当時のイギリスの観客は、ミニクーパーがイタ車をケムにまく光景とかを観て溜飲を下げてたんだろうか。日本の映画界も竹島問題とかをうまく利用してさ、天皇陛下に命じられたホンダの社員が韓国に乗り込んでヒュンダイの車と壮絶なカーチェイスを行う映画とかを作れば面白そうなのに。

「Harold and Kumar Escape From Guantanamo Bay」鑑賞

最近は気の滅入る映画ばかり観てるような気がしたので、当分はおバカ映画を観ようと思ってまずこいつをiTunesストアでレンタル。

おもしれー。

いや、下ネタとマリファナと人種差別ネタだらけの低俗コメディではあるんですけどね、ギャグのセンスとタイミングが巧いんですよ。前作よりもいいかも。今までのアメリカの低俗コメディって、人種ネタがあっても白人の観点からとらえたジョークが多かったから(「スパイ・ハード」とか)観ててドン引きするようなことが多かったけど、この作品はアジア系のマイノリティの観点で白人をコケにしてる点が観ててスカッとするのかな。

話の内容は以前に書いた通りだけど、題名のグアンタナモ収容所は実はあまり出てこなくて、大半は前作同様にアメリカの僻地をさまよいながら変な連中に遭遇していくというものになっている。例によってニール・パトリック・ハリスも前作以上にパワーアップして登場してくるぞ。主人公の2人のうちハロルドが真面目な方でクマーがボケということから、話のおいしいところはみんなクマーが持ってっちゃってるところが我々黄色人種には物足りないところですが、まあいいや。今回は元彼女がどこぞの嫌な奴と結婚してしまうという、個人的に心の琴線に響くテーマを扱ってたのでラストは意外と感動してしまった。不満があるとすれば、ロブ・コードリー演じる政府の捜査官の役が薄っぺらだったことかな。「デイリーショー」関連ではエド・ヘルムズも出てるぞ。

内容が内容だけに万人に勧められる作品ではないけど、劇場でヒットしたことで早くも第3作の製作が決まったということなので、アジア人2人のハリウッドでの活躍に今後も期待したいところです。「ラスベガスをぶっつぶせ」みたいな「アジア人の白人化」なんかもうやめてさ。

ちなみに黒人のステレロタイプって「グレープソーダ」も好きなことになってんの?スイカとかフライドチキンとかいろんなものに関連づけられてんなあ。

「BE KIND REWIND」鑑賞

なんか9月にはロクでもない邦題で日本でも公開されるそうですが、とりあえず先に観ました。

「モス・デフとジャック・ブラックがコスプレして過去の映画をリメイクするコメディ」だけを期待してると少し肩すかしをくらうかもしれない。むしろよくできた現代のおとぎ話、といった感じ。確かに彼らの映画撮影の部分は面白いし、全体的にほのぼのとしてて楽しいんだけど、脚本がいま1つ弱いかな。トレーラーを観れば話の展開の半分が分かってしまう点とか、磁化したジャック・ブラックの頭の話が途中で立ち消えになる点とか、もうちょっと脚本を練り込めば傑作になってたと思うんだが。やはりゴンドリー作品にはチャーリー・カウフマンが必要なのか?

あとジャック・ブラックの演技は良くも悪くも他の出演作とまったく同じ。あれだけ同じキャラで主役を務め続けてるのはある意味すごいよな。劇場まで観に行く価値のある作品かどうかは微妙だが、レンタルしてみんなで観るのには適した作品じゃないですか。

ちなみにトレーラーではボクシング映画のシーンが出てきて、てっきり「ロッキー」かと思っていたら「モハメド・アリ かけがいのない日々」だったんですね。ドキュメンタリー映画をリメイクするなよ!

「BATMAN GOTHAM KNIGHT」鑑賞

観た。やはり俺は「アニメ絵」が好きではないと実感することしきり。6話のオムニバスになっているので、各話ごとの感想を述べる。

「Have I Got A Story For You」
子どもたちが自分なりのバットマン像を語り合う、という話はコミックでもTVアニメ版でもあったので目新しさはなし。背景のイラストレーションは非常に美しい。

「Crossfire」
キャラクターの目がデカい絵は嫌いなのですよ。話もごく凡庸。クリスプス・アレンよりもハーヴェイ・ブロックに登場して欲しかったな。

「Field Test」
ブルース・ウェインがイケメンのヤサ男として描かれている段階でもうダメ。

「In Darkness Dwells」
そこそこ良い出来。キラー・クロクは好きなのです。

「Working Through Pain」
これもウェインがヤサ男になってる。話も変に抽象的になっていて楽しめない。ブライアン・アザレロがストーリー担当だけに残念。

「Deadshot」
やはりウェインはこの話のようにゴツい肉体派じゃなきゃあ。デッドショットがいまいち弱いような?でも悪い話ではなかった。

日本のアニメーターにバットマンをやらせるという実験的精神は認めるものの、オムニバス形式をとっているために各話が10分程度の尺になり、話の展開に深みがないのが残念なところ。ブルース・ティムのTVアニメ版が20数分で非常に凝ったストーリーを誇っていたのを考えると、特に最後のデッドショットの話なんかは2倍の尺があればなあと思わずにはいられない。あと良かったのはバットマンの声優がTVアニメ版のケビン・コンロイだったこと。あのドスのある声は好きなのです。

今回はiTunesストアでレンタルしたけど、DVDには日本語の字幕と吹替えがあるようなので、日本でも発売されるのかな?日本のアニメファンなら俺よりももっと正当な評価を与えることができるでしょう。

「孤独の報酬」鑑賞

「オー!ラッキーマン」のリンゼイ・アンダーソン監督による1963年の映画「孤独の報酬」(This Sporting Life)を観た。

主人公のフランクは炭坑夫だったが、街でラグビーのチームに出会ったことから入団テストに志願し、持ち前の獰猛さをもってテストに合格、スター選手の仲間入りをすることになる。その一方で彼は下宿の大家で、子持ちの未亡人であるマーガレットに恋をしており、いろいろ言い寄ろうとするが彼女はなかなかフランクに心を開いてくれない。そんなうちに彼は試合で殴られて前歯を折る大ケガをし、選手としての活躍にも陰りが見え始め、ゆっくりと転落の道を辿っていくのだった…。というのがまあ大まかな話。

あまりにも愚直であるばかりに好きな女性には強引に言い寄ることしかできず、チームのオーナーたちには「筋肉バカ」としか見なされない男の悲哀をうまく描いた作品。ガタイのいいマーロン・ブランドといった感じで主人公のフランクを演じるのはリチャード・ハリス。この人の作品って「ハリー・ポッター」くらいしか観たことがなかったんだけど、こんな屈折した悩みを持った男を演じられる名優だったんですね。あと初代ドクター・フーことウィリアム・ハートネルも脇役で出てるぞ。

尺が134分と長いために冗長なメロドラマのように感じられるところもあり、時には主人公の傲慢さが鼻につくところもあるものの、過去と現在の場面が交差してストーリーが始まる編集のテクニックは興味深いし、白黒の画面のなかで男たちが泥にまみれるラグビーの試合の描写などもよく出来ている。60年代のイギリスの労働者階級を如実に表した佳作といったところか。