「ブロークン・フラワーズ」鑑賞

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ジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」を観た。

ジャームッシュの長編作品は全部観てるんだが、なんか「デッドマン」以上にピンとこない作品だったかも。オヤジが過去の恋人たちのもとを訪れて、見たことのない息子について知ろうとするプロットって、どうも俺がジャームッシュに期待してるものとは違うような気がするんだけどね。これがウェス・アンダーソンの作品だったらハマってたんだろうけど。ただ決して悪い作品ではなくて、場面転換に入る黒みは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を彷彿とさせるし、主人公が何歳になっても女の脚に目がいくようなスケベだという描写とかは結構良かったんだが。でもジュリー・デルフィーとかクロエ・セヴィニーとか、いい女優がいろいろ出ているのに出番が少なかったのは残念。

前作(「コーヒー&シガレッツ」は除く)の「ゴースト・ドッグ」が傑作だっただけに、失速した感は否めない。でも「デッドマン」も最初に観た時は「ジャームッシュが西部劇なんか作るでねえ!」と思ったけど、最近は傑作だと思うようになってきたんで、この「フラワーズ」もいずれは再評価するようになるのかな。

「ウィズネイルと僕」再鑑賞

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カルト人気を誇るイギリス映画「ウィズネイルと僕」を10年ぶりくらいに観る。ずっと70年代の映画だと思ってたけど、1986年公開の作品だったんすね。

再鑑賞して実感したのは、これがものすごく単純なプロットを持った映画だということ。カムデンに住む無職男2人が、田舎にバケーションに行って帰ってくる。ただそれだけ。もちろん途中でいろんな騒動が巻き起こるんだけど、基本的なプロットはものすごく単純。魅力的なキャラクターと印象的なダイアログがあれば面白い映画は十分作れることを証明した好例になるのかな。ジミヘンの曲の使い方もなかなか効果的。あと劇中では男にヤられることに対して怯え続けるマーウッド(「僕」だ)だが、実は振る舞いとか話し方が何気にとてもカマっぽいというのが興味深い。

個人的にはむかしアイルランドのド田舎で2週間ほど過ごしたことがあって、そのときの生活がこの映画での田舎の描写と多分に重なるところがあり、何か懐かしい思いにしてくれる映画なのです。

I demand to have some booze!

「トゥモロー・ワールド」鑑賞

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2006年度の最優秀映画という声も高い「トゥモロー・ワールド」をやっと鑑賞。

うむ。確かに素晴らしい出来の映画。実のところあまりにも作りが手堅すぎてツッコミどころもなく、あまりコメントすることがなかったりする。やはりイギリスにはファシスト国家の姿がよく似合うね〜とか、マイケル・ケインは相変わらず演技が上手いね〜とか、そんなことしか書けん。あれだけのキャストとセットを備えたのであれば、アンソニー・バージェスの「見込みない種子」の撮影がついでに出来たかも。テーマは正反対(人口過剰)の作品だけど、話の舞台と流れが似てるような気がしたので。

ちなみに個人的には終盤のカメラ長回しよりも、例のピンポン球のほうが、どうやって撮影したのか知りたかったりする。

「最前線物語」鑑賞

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サミュエル・フラーの代表作(だよな?)である「最前線物語」を鑑賞。最近は158分の長尺版が出たらしいけど、今回観たのは従来の113分バージョン。

「大きな赤の1番」こと第1歩兵師団の第二次世界大戦における姿が、いくつもの小話として描かれていく作品で、全体的な統一感にこそ欠けるものの、フラーの経験に基づいた戦闘描写が非常に細かく凝っていて見応えがある。なかでも迫力があるのはやはりノルマンディー上陸の戦闘で、鉄条網を破るために兵士たちが順番通りに爆弾筒を抱えて進もうとするものの、ちょっと進むたびに狙撃されてバタバタ倒れていくさまは、あまりにも人が死ぬのでまるでドリフのコントか何かを観てるような気になってしまう。波打ち際の死体の腕時計(どんどん血まみれになっていく)によって上陸作戦が長引いていることを伝えるという演出もなかなか巧いね。

出演者には「帝国の逆襲」に出たばかりのマーク・ハミルなどもいるけど、やはり1人で映画を食ってしまっているのがベテラン軍曹を演じるリー・マーヴィン。敵の裏をかいてドイツ軍兵士をナイフでサクサク刺し殺していく一方で、強制収容所にいた子供を気遣うなどといった、奥の深いキャラクターを寡黙にうまく演じきっている。

ちなみに作品を通じて部下たちが軍曹に軽口を叩きまくってるんだけど、これは現実でもそうだったんだろうな。日本軍だったら即座に上司に処刑されてそうなものですが。

「SCOTLAND, PA」鑑賞

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わたくし大学生の頃は英文学を専修しておりまして、自分が読んだ本について語れるようなゼミもないまま、英語の教科書を1文ずつ生徒たちがひたすら訳していくクラスを50くらい履修させられるという、それはそれはヒドい大学だったのですが、2年生のころには「英文学の巨匠について学ばんかい!」というわけでシェイクスピアに関するクラスを強制的にとらされたんだが、このときの先生というのが平気で10分くらい遅刻してきて、その代わり授業の終わりを15分くらい遅らせるようなボンクラでさ、そのくせ「オメーらシェイクスピアのことなんて知らねーだろ」みたいな口調で授業をしやがんの。ああ、イヤな学生時代だったなあ。これらロクでもない授業と最低の失恋が俺の大学の思い出です。

で話をシェイクスピアに戻すと、多くの人がそうだと思うけど、学校で無理矢理読まされる作家(森鴎外とか)って概してものすごくツマラなく感じられてしまうわけで、おかげで俺は今になっても「ロミオとジュリエット」とか「リア王」とかを読んだことがなくて、まっとうに読んだシェイクスピア作品って「ジュリアス・シーザー」くらいかもしれない。

そんなわけですが、ふとしたきっかけで観た、「マクベス」をベースにしたダーク・コメディ「SCOTLAND, PA」は結構楽しめた。題名のとおり舞台となるのはペンシルバニア州にあるスコットランドという田舎町で、時代設定は1975年。主人公のジョー・マックベス(ジェームズ・レグロス)は町の小さなファストフード・レストランで働くしがない男。彼は遊園地で奇妙な3人のヒッピーから占いを告げられたあと、野心家の妻(モーラ・ティアニー)にせがまれて、レストランのオーナーであるダンカンを殺害して店を乗っ取ってしまう。ダンカン殺しの罪は彼の息子マルコムにきせられ、マックベス夫妻による店の経営は大成功して万事が順調に見えたが、そこに風変わりだが敏腕な刑事マクダフ(クリストファー・ウォーケン)が現れ、彼の調査はマックベス夫妻を苛み、そこから新たな殺人が起きていく…。といった内容の作品。バッド・カンパニーの曲が多用されているのも特徴らしいけど、俺あのバンドよく知らない。

低予算映画ながら、セリフのタイミングとかジョークの間のとり方とかがなかなかよく出来ていて面白い。平凡で退屈な町の住民たちの描写もうまくて、主人公マックベスはやや愚鈍すぎるような気もするものの、悪妻を演じるモーラ・ティアニーのアグレッシブな演技が秀逸。でもやっぱり一番いいのはクリストファー・ウォーケン!どんなゴミクズ映画(「カンガルー・ジャック」「カントリー・ベアーズ」)でも彼の出てるシーンだけは必ず面白いウォーケンだが、この作品でもサエてるんだか間抜けなんだかよく分からないベジタリアンの刑事を怪演していて実に素晴らしい。いつ見てもいい意味で何考えてるかわからないというか、ただ立ってるだけでもなんか怪しくて面白いんだよね。ラストの光景もえらく笑えたし。

でもまあこういう映画って、やはりシェイクスピアを知らないと十分に楽しめない作品なんだろうね。ただシェイクスピア原案の映画って毎年のように製作されてるけど、アメリカ人がそんなにシェイクスピアに通じてるとも思えないんだが。