「300」鑑賞

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やっと「300」を観た。

う〜ん、なんかダメ。「V・フォー・ヴェンデッタ」と同じで、製作側の原作に対する忠誠心は感じられるものの、脚色がマズいために十分に楽しめない作品になってしまっている。

アメコミ原理主義者として言わせてもらうと、全体的に演出が派手で騒がしく、原作にあった静と動のコントラストが失われているのが残念。以前に「シン・シティ」についても書いたけど、コミックではクールに決めて印象的になっていた場面が、映画だと過剰な音楽がついたりして逆になんか陳腐になってしまっている。例えば「ここはスパルタじゃい!!」のセリフなんかも、原作では慌てふためく伝令に対してレオニダスが無慈悲に言い放つ姿がカッコよかったのに(下図参照)、映画だとテンション高すぎて何だかなあ、という感じ。まあこの場面がネット上でカルト的人気を誇っていることを考えると、多くの人は映画の演出を気に入ってるみたいだけどね。

ほぼ全てがグリーンバックという映像については、あまり何も言う気はないが、リン・ヴァーリィの素晴らしい色使いが反映されてなかったのは残念なところか。戦闘シーンはそれなりに観てて楽しめたけど、なんかスローモーションを使い過ぎのような?スローを効果的に使い切れていないところが、ジョン・ウーのようなベテランとザック・スナイダーの力量の差ですかね。あと「大軍の通れない狭い道で戦うこと」が話の要なのに、やけに広いところで戦っていたような…?遠くから弓矢で総攻撃されるようなところにいちゃ駄目じゃん。ファランクスの組み方もなんか違ってたような気がする。

そして一番意味不明だったのが、スパルタでの王妃のシーンの数々。あれなに?あんなの原作に無いよ?原作では短い出番ながら、死地に赴く夫に向かって「あなたが昨晩お盛んだったのは、こういうこと(子孫作り)だったのね」と言って陰で涙を流すシーン1つが非常に印象的だったのに、映画だとスパルタでウロウロしてる姿が何度も挿入されて、戦地の場面の緊張感を削ぐことしきり。最近の映画じゃヒロインの活躍をそれなりに映し出すのが必須なのかもしれないが、これは女子供の出てくる作品じゃないんだよぉ!「アラビアのロレンス」を見習え!こんなんで話を膨らませるんだったら、ステリオスあたりをもっと活躍させればよかったのに。

あと最後の名セリフ「クセルクセス… 死ね!」を削除したことは、それこそ死刑に値する。あれこそテンション最大で叫んでいいセリフなのに。

でもいちおう製作側の弁明をさせてもらうと、原作を映像化したいという熱気はきちんと伝わってくるんですよ。あれだけ暴力的な内容にするにはスタジオともかなりケンカしただろうし。ただ結局のところ監督たちの力不足によって、映像化には失敗してるような気がする。コミックの映画化についてはいろいろ言いたいことがあるんだが、これはまたの機会にする。アメリカではこの映画が大ヒットしたおかげで、あの「ウォッチメン」を映画化する承認をザック・スナイダーは手にしたわけだが、この映画を観た限りでは、あまり期待できそうにない気がする。

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「ザ・ブリッジ」鑑賞

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半月に1人が飛び降りるという世界有数の自殺の名所、ゴールデンゲート・ブリッジでの自殺者たちを追ったドキュメンタリー「ザ・ブリッジ」を観る。「AVクラブ」でのレビューを読んで結構期待してた作品なんだけど、実はあまり面白くなかった。

この作品は長期にわたる橋の撮影によって収められた複数の自殺の瞬間と、そうした自殺者の家族や友人たちのインタビューによって構成されている。これに加えて自殺を阻止した人の話や、橋から飛び込んで奇跡的に助かった人たちのインタビューもあるんだけど、結局のところなぜ彼らが自殺を試みることになったのかについては、何ら明確な答えが出ないままに作品は進行していく。飛び込んで生還した人にとっても、なぜ自分が橋から飛び降りたのかについて明確な説明ができないでいる。まあ当然といえば当然のことなんだろうけど、要するに答えのない問いかけがずっと続いているわけで、観ている側としては居心地が悪くなるのは確か。映像もインタビューの場面と自殺の瞬間が交差して映し出されるだけで、やや単調かも。自殺の場面は確かに衝撃的なんだが、観てて楽しいものでもないし。

ゴスの格好をして橋の上をうろついている人がいたら、とりあえず声をかけてあげましょうね、というのがこの映画からの教訓なんだろうか。うむ。

「マーク・トゥエインの大冒険/トム・ソーヤーとハックルベリーの不思議な旅」鑑賞

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カート・ヴォネガットの影響でマーク・トゥエインの本はよく読んでいたのですが、そのトウェイン自身を主人公にしたクレイメーション映画「マーク・トゥエインの大冒険/トム・ソーヤーとハックルベリーの不思議な旅」(1985)を観る。

これはクレイメーション(登録商標だったのか!)としては世界初の劇場長編で、トム・ソーヤーやハック・フィン、ベッキー・サッチャーといったおなじみのキャラクターたちがトゥエイン自身と奇抜な飛行船に乗り込み、ハレー彗星に向って旅をする…といったファンタジー風の作品になっている。旅の途中の小話として「その名も高きキャラヴェラス郡の飛び蛙」や「不思議な少年(第44号?)」、そして俺の大好きな「アダムとイブの日記」といったトゥエインの作品の物語が語られていく。「アダムとイブの日記」の最後の一文はいつ読んでも(聴いても)感動するなあ。俺の人生観に大きな影響を与えた「人間とは何か」も含まれてればなお良かったんだろうけど、あれはエッセイだからね。

クレイメーションの出来も優れており、細部の描写まで凝っていて観る人を飽きさせない。ただ「ウォレスとグルミット」とかに比べて人間の加尾の造形がリアルなので、ちょっと生々しすぎるところがあるかも。また「不思議な少年」のサタンの描写がグロテスクだということで欧米では問題になったらしい。Youtubeにおいては「放送禁止アニメ!」なんて紹介がされていたりする。

完璧ではないにしろ、野心的で面白い作品。ちなみにハック・フィンがトロい奴として描かれているのが気になるんだけど、奴ってもっとストリートワイズなキレ者じゃなかったっけ?

「X-MEN:ファイナルディシジョン」鑑賞

517yy5e3g8l_ss500_.jpg「X-MEN:ファイナルディシジョン」を観る。

ダメ。駄作。

最近は星の数ほど作られてるアメコミ映画ですが、そのきっかけとなった「Xメン」を俺は高く評価していて、原作がソープオペラみたいにチャラチャラしてるのに対し、「差別される者同士の争い」という重厚なテーマをきちんと汲み取って前面に据えたのが良かったかなと(そのあと原作もグラント・モリソンが執筆するようになって一気に面白くなったが)。「X2」も政府の強硬派に迫害されるミュータントたちの描写が結構良かったと思うし。要するに人物描写がきちんとしてたんだよね。

しかしこの「ファイナルディシジョン」はプロットを中心に据えてしまったゆえに人物描写に時間が割かれてなくて、登場人物がみんな薄っぺらく感じられてしまう。セリフはみんな説明口調だったり凡庸な一言ばかりで、ハリー・ベリーやヒュー・ジャックマンの演技がものすごく下手に見える。イアン・マッケランの演技さえもが安っぽく見えるのって、とてつもなく演出がヘタなんじゃないの?マグニートーって白昼の住宅地に登場させるようなキャラじゃないと思うけどね。その他の登場人物も適当に出しましたって感じで、あんなサエないジャガーノートなんて誰も見たくないんだけどね。いい年して全身メイクに挑んだケルシー・グラマーには感心するけど。

そして肝心のプロットだが、前作のラストから次は「ダーク・フェニックス」になることは明らかだったのに、そこにミュータント治療薬のプロットを混ぜたおかげでなんかまとまりに欠けたものになっている。「ミュータントであることは病気なのか?」というテーマが深く掘り下げられるのかと思ったらそうでもないし、その一方でジーン・グレイの行動はまったく意味不明。サイクロプスはあまりにも可哀想じゃないでしょうか。

監督の交代劇などでドタバタしてたのには同情するが、ブレット・ラトナーってやはりやっつけ仕事の人なんだなと実感。このあとはマグニートーやウルヴァリンのスピオンオフ作品が製作されるそうだけど、この作品よりかはマシなものを期待してまっせ。

「みんなのうた」鑑賞

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第5代ヘイデン=ゲスト男爵ことクリストファー・ゲストのモキュメンタリー作品「みんなのうた」を観る。彼のこの前の作品「ドッグ・ショウ」はいまいちピンとこなくて、どんな内容だったか正直覚えていないくらいなんだけど、こいつは面白かった。

フォークミュージックのプロモーターが死去したことで、彼に世話になったバンドたちが再結成してコンサートを行うまでの姿を追った作品で、よく観てないと冗談なんだか真面目なんだかよく分からないような、ひたすらシュールなジョークが続いていくところは「ドッグ・ショウ」と同じ。出演者はゲスト自身のほかに、ユージン・レヴィやマイケル・マッキーン、ハリー・シェアラー(スパイナル・タップだ!)などなど、ゲストの作品ではおなじみの面々が顔を揃えている。

特徴的なのはコメディなのに底辺には徹底したペーソスがあることで、それを象徴してるのがレヴィとキャサリーン・オハラが演じるミッチ&ミッキーというフォークデュオ。ずっと前に別れた彼らの片方は平凡な主婦生活を営み、片方は精神を病んでしまっている。そんな彼と彼女が久しぶりに再会して歌をうたう姿ははかなくも美しい。コンサートが成功に終わったからってまたスターになれるとは限らず、その後のバンドたちの微妙な姿までを描いてるのがちょっと酷でもある。

そして劇中でバンドが披露する曲がどれも素晴らしく、コンサートのシーンだけでも十分楽しめるかも。特にバンドが総出演で歌う「A MIGHTY WIND」の光景には圧巻される。これらの曲をすべて出演者たちが自ら作曲して演奏したというんだから、才能あるよなあ。