「影なき狙撃者」鑑賞

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今まで観てなかったジョン・フランケンハイマーの政治スリラー「影なき狙撃者」を観た。

カルト的人気を誇っている作品だが、確かに面白い。1962年という冷戦のまっただ中の時代によくこういった作品を作ったよなあ。冒頭の悪夢のシーンも非常に独創的で見事。ジェシカおばさんことアンジェラ・ランズベリーの鬼気迫るママさんぶりもいい感じ。共産圏に拉致されて洗脳されて帰ってきた人、というのはある意味とっても現代的なプロットなんだけど、さすがにそれを日本で映画化したりしたらヤバいだろうなあ、などという野暮なことをちょっと考えてしまった。

フランク・シナトラ演じる主人公の洗脳がうやむやになってしまうこととか、ジャネット・リーの役柄がいまいち理解できないような点もあるものの、全体的には非常に面白い作品。フランケンハイマーというと駄作「レインディア・ゲーム」しか思い浮かばなかった俺ですが、昔はこういう作品を撮ってたんですね。

ジョナサン・デミによるリメイク(ひでえ邦題のやつ)も今度観てみよう。

「ハッスル&フロウ」鑑賞

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AintItCoolとかで高い評価を得ている「ハッスル&フロウ」のDVDをレンタルして観る。

話の展開自体は決して斬新なものではないけれど、転職に命をかける中間管理職のごとく、音楽で有名になって底辺での生活から抜け出そうとする主人公(テレンス・ハワード)がメンフィスのポン引きだってところがミソ。高級なマイクを手に入れるためには自分とこの娼婦に売春を強要するようなダメ男でありつつも、私欲というよりも執念に駆り立てられて運をつかもうとする姿がカッコいい。男の映画っすね。

ボロい家の一室を改造して作ったスタジオでのレコーディング風景も秀逸で、ヒップホップ映画としては「8マイル」よりも面白いかも。俺はギャングスタ・ラップって嫌いなんだけど(オールド・スクールは好き)、「♪ポン引き稼業も楽じゃねえ♪」という異様にキャッチーなテーマ曲(アカデミー賞受賞)にはのせられていまう。一時は第2のマーティン・ローレンスになるかと思われた(ケナし言葉だよ)アンソニー・アンダーソンも、プロデューサーの役を真面目に演じていていい感じ。アイザック・ヘイズもチョイ役を相変わらず渋く演じている。

ちなみに前から不思議に思ってるんだけど、ポン引きってどうやったらなれるんだろう。突然どっかから娼婦を集めて来れるわけでもないし、やはり誰かに弟子入りしてから暖簾分けみたいなことをするんだろうか。

「サイエンス・オブ・スリープ」鑑賞

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ミシェル・ゴンドリーの新作「The Science of Sleep」がDVDで発売されたので早速鑑賞。

うわっはっはっは。なんかえらく笑える作品だった。

父を亡くしてメキシコから母の住むパリへと移ってきたステファンは芸術家志望の青年。新しい職場での退屈な作業には失望するものの、アパートの隣に住む音楽家志望のステファニー(シャルロット・ゲンスブール)に惹かれていくようになり、そこから彼の現実と夢の境界があいまいになっていく…というのが話の大まかなプロット。夢見がちな青年が同じアパートの女性に恋慕して妄想を抱く、という意味では「めぞん一刻」に通じるものがあるのかな。

とにかくステファンの夢のシーンが秀逸で、最先端のCGなんかには頼らずに逆まわしやストップモーションを多用したチープな特撮(ゴンドリーが監督したドナルド・フェイゲンの「snowbound」のPVに似てる)が実に味があっていい。段ボールでできた撮影スタジオとかハリボテの町並みとか、こういうのはアイデアの勝利だよね。1秒間だけ過去や未来に行けるタイムマシンなんてのも非常に面白い。この夢のシーンの滑稽さはとても文章では書き表わせられないので、ぜひご鑑賞あれ。

ただし話の大半は現実世界での出来事を扱ってるので、あまり特撮だらけの作品を期待してると肩すかしをくらうかも。「エターナル・サンシャイン」もそうだったけど、特撮を単なる現実逃避の表現として使わず、むしろそれによって恋愛の切なさを強調しているところが巧みなところか。主人公たちの芸術活動が芸大の生徒みたいで(うちの近所にたくさんいる)なんか青くさい気もするけど、いくつになっても夢を見るのは大切だよってことですかね。

「エターナル・サンシャイン」ほどではないものの、非常によくできた作品。チャーリー・カウフマンの脚本がなくてもゴンドリーは面白い作品が撮れる、ということを証明したものになるのかな。今年公開予定の「Be Kind Rewind」にも期待したいところです。

「Invincible Iron Man」鑑賞

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「Ultimate Avengers」「Ultimate Avengers 2」に続く、マーヴェル&ライオンズゲートのDVDムービー第3弾「Invincible Iron Man」を観る。前2作がけっこうダメダメだったんで、三度目の正直を期待してたんだが…。

やっぱりダメ。三球三振。

やはりストーリーの盛り上がりのなさが致命的な欠点になっている。CGによってキャラクターの動きはそこそこ凝ったものになっているものの、大規模な戦闘シーンとかがあってもひどく単調なもので、なんだかお約束として入れているような感じが否めない。戦闘シーン以外でも登場人物の性格描写がえらく典型的で、観ている人の心をつかむようなところがないんだよね。マーヴェルのキャラクターはDCのものに比べてアンチヒーローが多いから、正々堂々としたヒーローという描写がしにくいということは以前にも書いたけど、だからって主人公がウジウジと悩んでいるのをずっと観せられても楽しくないのですよ。

それと非常に個人的な好みから問題点を挙げると:
●「Ultimate Avengers」と今回のトニー・スタークが同一人物なのかどうか分かりにくい(コミックでは別物)
●ジム・ローズが出てるのにウォー・マシーンが登場しない
●赤&金色のアイアンマンの出番が少ない
●最後のクライマックスにおいて主人公が活躍しない

などなど、ファンの期待を裏切ってくれるような展開が盛りだくさん。それと宿敵がマンダリンということで舞台の大半が中国になっているんだが、中国人(というかアジア人)の描写が横柄・臆病・役立たず・迷信深い、といったステレオタイプになっていて、もちろん善良な中国人も出てくるんだけど、いずれも西洋人とは非常に異質な存在として描かれているのが非常に気になる。「Ultimate Avengers 2」でのアフリカ人も殆ど同じような描写をされてたよな。あと火・水・土・風の四大元素を象徴した古代のロボットみたいなのが登場するんだけど、中国なんだから五大元素にならないと変じゃないか?

次は同じスタッフで「ドクター・ストレンジ」をDVDムービー化するらしいけど、マーヴェルはここでいったん全てを白紙に戻してアニメ化を考え直したほうがいいような気がする。DCが現在ブルース・ティムと作っている「The New Frontier」のDVDムービーに対抗できるような作品をぜひ作ってもらいたいところです。

「THE WHITE DIAMOND」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの2004年のドキュメンタリー「THE WHITE DIAMOND」を観る。

これは小型の飛行船を使って、ガイアナの熱帯雨林を上部から撮影しようとする航空技師グラハム・ドリントン博士の努力を追ったもので、子供の頃にロケットの爆発で指を失いながらも航空技術没頭するドリントンの姿と、熱帯雨林という舞台は「アギーレ」や「フィッツカラルド」を彷彿させる。あと「WILD BLUE YONDER」と同じくErnst Reijsegerの音楽が多用されている。またヘルツォークの他のドキュメンタリー「Little Dieter needs to Fly」の主人公であるディーター・デングラーが別の小型飛行船を使って撮影中に転落死するのをドリントンは目撃しており、その事故の暗い影が作品を覆っているのが特徴的だ。

肝心の撮影飛行は必ずしもスペクタクルなものではないものの、トラブルにもめげず夢を叶えようとするドリントンの姿や、ガイアナの信じられないくらいに巨大な滝、および熱帯雨林の動物たちの光景は非常に見応えがある。危険が伴う最初の飛行にも、ヘルツォークは自らカメラを抱えて乗り込むんだからタフだよなあ。

あと滝の裏側にあるアマツバメの巣を撮影するシーンがあるんだが、結局のところヘルツォークはこの映像を公開せずに終わっている。現地の人たちの言い伝えを尊重したのか、それとも観る人に想像の余地を残しておきたかったのか不明だけど、こういう普通のドキュメンタリー作家だったらまずしないような判断に、彼の映画人としての奥の深さを感じてしまうのです。