「Babylon」鑑賞


チャンネル4の新シリーズ。今回のはパイロットムービー的な扱いで、秋からシリーズの撮影が始まるとか?監督はなんとダニー・ボイル。オリンピックの演出やったかと思いきや「トランス」撮って、そのあとこれを撮るとは忙しい人ですね。

イギリスの警察の世間の評判を回復させるために、スコットランド・ヤードはPRコンサルタントのリズ・ガーヴェイをアメリカより招聘。さらに警官たちの日常を撮影させるためにカメラマンを同行させる。リズはさっそく警察のイメージ向上にとりかかるものの、前任者の仲間の妨害などに遭って苦労する。さらに悪いことにロンドンで何者かによる連続狙撃事件が発生して…というプロット。

上は警視総監から下は現場の警察官まで、警察の混沌とした日常を赤裸裸に描いた内容になっていて、警察の指揮系統内、およびメディアに対する情報伝達の錯綜っぷりが大きなテーマになっている。ただしPRコンサルタントが主役とはいえ「The Thick of It」ほどのドギツさはないかな。

リズを演じるのが「ザ・イースト」のブリット・マーリングで、僅か数本の出演作で知的なブロンドという役柄を確立した感のある彼女ですが、そのキャラをそのまんまイギリスにも進出させております。警視総監を演じるのがジェームズ・ネスビットで、少し痩せたかな?主要なキャストのほかにPTSD気味の機動隊員とか警官に同行するカメラマンとかが出て来るんだけど、後のシリーズ版ではどこまでが再登場するんだろう。

登場人物が多いことに加え、話のトーンがコメディになったりサスペンスになったりと全体的に散漫な感じがするものの、演出は相変わらず巧みだしそれなりに楽しめる作品であった。最近のイギリスの警察ドラマって陰惨な展開のものが多い気がするので、こういう軽めのものがあっても良いかと。imdbなどでは評判が芳しくないみたいだが、シリーズになって本調子になってくることに期待。

「THE AFTER」鑑賞


以前に「ゾンビランド」とか作ったのに続いて、米アマゾンのインスタントビデオがパイロット版をまた10本くらい製作して公開しているのであります。前回のやつの中では「Alpha House」などがいちおうシリーズ化されているものの、地上波局の番組と肩を並べて賞を次々と獲得しているネットフリックスのオリジナル番組に比べて、アマゾンのはいまひとつパッとしないのは何故なんだろうね。「この10本のうち、投票で人気が高かったものをシリーズ化します」というスタイルはやめて、数本に絞ってがっちり宣伝すればいいと思うのだが。

そしてそのうちの1本がこの「THE AFTER」。ジジは夫と子供を東海岸に残してロサンゼルスにやってきた女優で、今日もオーディションに勤しんでいたが、乗り合わせたエレベーターが停電によりダウンしてしまう。他の乗客と協力して脱出したジジたちだったが、いつの間にか外部では未曾有の混乱が起きていた。原因不明の停電・断水によって街がパニックに陥るなか、ジジたちは救急車を奪取して仲間の1人の邸宅へと避難する。しかしそこにも暴徒があらわれ、さらには謎の言葉を話す不気味な生物も姿を見せて…というプロット。

監督と脚本は「Xファイル」のクリス・カーター。最近は何やってんだろうと思ったらこんな仕事をしていたのか。役者の演技がどことなくぎこちない気もするが、暴徒が街にあふれるシーンとかは大掛かりなセットとエキストラを使って、ネット番組とは思えない規模で撮影してますよ。ただこういうパニックの描写って映画でもテレビ(「ウォーキング・デッド」や「フラッシュ・フォワード」とか)でも最近よく見かけるので、今さらやってもなあ、という感は否めない。

エレベーターに閉じ込められた客の誕生日がみんな一緒だったり、謎の生物の体にあったマークと同じイレズミをしている客がいたりと、それなりに謎めいた設定もあるものの、あまりそっちに焦点があたってなくて「じゃあ次はどうなるんだろう」という気になれないのが残念。あと主人公にフランス人の役者を起用したのは何故だろう?訛りがきつくてセリフが聞き取りづらいのですが。

「Xファイル」ってSFの部分の描写がヌルくて個人的には好きな番組ではなかったが、これもどうも中途半端な内容になっているな。でもクリス・カーターのネームバリュー(あれば)でシリーズ化されるかな?日本のアマゾンもちゃんとこういうのを流せばいいのに。

「PREACHER」TVシリーズ化決定


昨年から噂はされていたけど、ガース・エニス&スティーブ・ディロンの傑作コミック「PREACHER」のTVシリーズ化をAMCが発表したそうな。企画は意外にもセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグ。

以前はHBOで企画が進んでるだのサム・メンデスが監督するだのと映像化の話は絶えなかった作品ですが、やっとこれで決まったかという感じ。AMCは「ウォーキング・デッド」で成功を収めているため、同じようにコミックが原作のTVシリーズが欲しかったのでしょう。HBOのほうが規制が緩いので下ネタ&バイオレンス満載の原作をもっとよく表現できたかもしれないが、文句は言うまい。

むしろ懸念点はセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグというコメディ畑の2人が関わってるところでして、あんたらシリアスな作品が書けんのか?という気がするのだが、7年も企画を温めていたという熱意があるみたいだし、原作もお下劣なコメディ要素があるので、「グリーン・ホーネット」みたいなダメダメ作品にはならないでしょう。というかならないことを願いたい。

あとはね、天使と悪魔の子供と融合した説教師が、ガールフレンドとアイルランド人バンパイアと一緒に神を捜しにいくという内容が、アメリカの視聴者層にどこまで受けるかな?地上波局よりかは保守層の抗議には強いと思うものの、AMCってコマーシャル流してたよね?スポンサーの撤退とかが無いとよいのだけど。

とまあいろいろ書きましたが、自分が大好きなコミック(エニスにサインもらいました)が映画化されることは嬉しいわけで、「ウォーキング・デッド」に続くヒットになることを期待しております。

「RAKE」鑑賞


FOXの新シリーズで、オーストラリアの同名番組のリメークらしい。第1話の監督はサム・ライミ。

キーガン・ディーンはロサンゼルスの弁護士だったがギャンブル好き・女好き・全てにルーズで自己中心的という徹底的なダメ男で、借金取りにボコられても懲りずに賭博に手を出し、弁護士仲間からも疎んじられている存在。彼は別れた妻子からもあてにされず、事務所の助手の給料も払えない状態だったが、すぐに金になりそうだということで連続殺人犯の弁護を引き受けることに。彼の有罪を認めるだけの手続きだったはずが、土壇場になって殺人犯が自分の罪状を否認し、裁判は思わぬ方向に…というのが第1話のプロット。

ちなみに題名の「Rake」とは「熊手」のことではなく「放蕩者」という意味な。そんな放蕩者の主人公を演じるのがグレッグ・キニアで、ごく普通の男性というかサエない男を演じさせたら彼ってトップレベルの役者だと思うのですよ。だからこの番組の役もすごく似合っているのだけど、逆に似合いすぎているというか、あまりにも主人公に魅力がないのが問題ではないかと。協調性のない主人公ということでアメリカでは「ハウス」と比べられているようだけど、あっちはまだ患者を救おうという意思があったのに対し、こちらは被告を弁護しようという気が感じられず、法廷ドラマとしても中途半端な出来になってしまっている。

せっかくグレッグ・キニアを起用してるのになんかもったいない番組。今後はもっと面白くなることに期待しましょう。

「HELIX」鑑賞


『ギャラクティカ』のロナルド・D・ムーアが製作を務める、Syfyチャンネルの新シリーズ。ただしムーアはクリエーターやショウランナーではなく、『ギャラクティカ』ほどのコミットはしてないみたい。

120人ものスタッフが勤務する北極の巨大なリサーチセンターにおいて、3人の疫病患者が出たとの連絡が軍を通じてアメリカ疾病予防管理センターに届く。患者のうちの1人は、予防管理センターで働くファラガット博士の弟だった。弟の安否を確認するため、ファラガットは元妻の科学者や自分のスタッフを連れて北極へと赴く。そこで彼らが遭遇したのは、肉体が真っ黒な液体となって溶けた患者ふたりの遺体だった。しかしファラガットの弟のピーターは何かしらの抗体を持っているらしく、体を侵されながらも意識を保っていた。そしてピーターは超人的な怪力をもってベッドから抜け出し、センターのどこかに潜んでしまう。いったい彼の目的は?疫病の原因は?焦燥するファラガット博士たちの陰では、センター長のヒロシ・ハタケ、および軍部が陰謀を企んでいた…というようなあらすじ。

まあ北極を舞台にしたSFホラーというところ。ムーアは以前に「遊星からの物体X」のリメークに関わっていたはずなので、そこでのアイデアがここで活かされているのかもしれない。全体的にどこかで観たような…という展開が続いていて、登場人物も口の達者なデブとか、場違い的に若い美人科学者とか、型にはまった人たちが出ているような印象は否めない。ただし謎の細菌とか、変異を起こしたサルとか、いろいろ面白くなりそうな要素は散りばめられているので今後の展開に期待しよう。

ファラガット博士を演じるのはビリー・キャンベル。童顔だったロケッティアもさすがに老けたな。また準主役扱いで真田広之が出ていて、事件の黒幕らしきハタケ所長を演じている。彼の英語のセリフって、なんかすごく力を入れて喋っている感があるのが気になるのだが、それって俺だけだろうか。でも日本人俳優がレギュラーになれたというのは良いことだよね。

いちおう13話までの放送は決定しているらしいが、場所がとても制限されたストーリーであるので、それ以降の発展は難しいんじゃないかな?本国では「悪くないけど、『ギャラクティカ』ほどではない」というレビューが大半だけど、無理して『ギャラクティカ』と比べなくても良いんじゃないかと。とりあえず当分のあいだはストーリーを追ってみます。