今年観た映画トップ10

去年ほど明確な順位付けができそうにないので、良かった映画を日付順に10本挙げていく:

DOGTOOTH
実はこれを年間ベストに推したい気持ちもあるんだけどね。でも単なるキワモノ好きのように思われるので。ギリシャ映画は今年も注目しよう。

127時間
ラストのシガー・ロスの曲がかかるシーンがとても素晴らしいです。

恋とニュースのつくり方
普通だったら選ばないような出来の作品ですが、震災後にモヤモヤしていたしていたとき観に行ったらいい気分転換になったので、感謝の念を込めて。

ブラック・スワン
アロノフスキーの作品としては「レクイエム」と「レスラー」の延長線上にあるような感じで決して期待してたほどではなかったのですが、それでも出来の良い映画であることは間違いない。

X-MEN:ファースト・ジェネレーション
今年のアメコミ映画のなかではこれがいちばん好き。マシュー・ヴォーンやるじゃん。

ミッション: 8ミニッツ
純粋に楽しめるSF映画。邦題が残念なところではある。

スーパー!
繰り返して言うが、目の前で行列に割り込んだ奴を撲殺する光景は素晴らしい。

サブマリン
飛行機のちっちゃい画面で観たことには気が引けるが、とてもよく出来たボーイ・ミーツ・ガールものだよ。

ATTACK THE BLOCK
ニック・フロストなら「宇宙人ポール」よりこっちのほうが面白いよ。来年に日本でも劇場公開されるはず。

WARRIOR
最近観たばかりだから印象が強いのかもしれないが、しっかり作られたスポーツ映画でした。

他にも良かったのは「FOUR LIONS」「トゥルー・グリット」「マイティ・ソー」「MI4」などなど。

それなりに観ているようでイーストウッドとかソダーバーグあたりの作品が抜け落ちているのはいかんなあ。来年はアジアの映画もしっかり観ないと。そして非リア充であるがゆえにロマンス映画を敬遠してるのではないかと、映画のリストを見ていて気付いた次第です。もっとまんべんなく鑑賞しないといかんですね。

「WARRIOR」鑑賞


興行的にはパッとしなかったものの評論家たちから高い評価を受けた、MMA(総合格闘技)の選手たちを主人公にした映画。

ピッツバーグに住むパディ・コンロンは元ボクサーで2人の息子たちも格闘家として育てていたが、酒のために身を持ち崩して家庭は崩壊し、妻は下の息子のトミーを連れて家を去り、上の息子のブレンダンもパディと絶縁してUFCの選手となり、引退後は高校の教師となって妻子を養っていた。そんなとき10数年ぶりにトミーがパディの前に現われ、彼を格闘家として再びコーチしてほしいと依頼する。一方でブレンダンは経済的理由から家のローンが払えず、家族を救うために格闘家に復帰しようと考えていた。こうしてパディとトミーとブレンダンはお互いに打ち解けることもないまま、ニュージャージーで開催されるMMAの大会に参加することになるのだが…というような話。

話の設定とか展開はかなりベタで、疎遠になった兄弟とか元アル中の父親、試合を心配そうに見つめる妻や生徒たち、強豪選手をスパーリングでノシて周囲を唖然とさせる無名選手、なんていう少年マンガ的な要素が前半はてんこ盛りで、トレーニングのシーンも「Xメン;ファースト・ジェネレーション」にあったスプリットスクリーンのモンタージュなんかを使っていて、定番だなあという感じ。

しかし後半のMMA大会になってからは話が俄然と面白くなってきて、試合のシーンがどれも非常にリアルなものになっている。俺自身はMMAにまるで詳しくないものの、「あ、これはウソだな」と思わせるような展開は無かったと思う。ブレンダンがちょっと打たれ強すぎる気はしたけどね。

役者の演技も非常によく、パディを演じるニック・ノルティはやはりアル中オヤジの演技がよく似合う。ブレンダン役のジョエル・エドガートン(って「スター・ウォーズ」のオーウェンおじさんの人か!)は目がちっこいのでいまいち感情表現が分かりにくいかな。圧巻なのはトミー役のトム・ハーディで、プロ顔負けの筋肉をつけて怪物みたいなファイティング・スキルを見せつけてくれる。これなら「ダークナイト・ライジング」のベイン役も期待できそうだな。あとブレンダンの妻を演じるジェニファー・モリソンが意外にも良かった。他にもMMAの関係者がたくさん出てるみたい。元WWEのカート・アングルもロシアの選手として登場するぞ。

ベタな内容でも話のツボをちゃんと押さえてれば面白くなるんだよ、というお手本のような良作。監督のギャヴィン・オコナーはアイスホッケー映画の「ミラクル」も撮っているのでこういうスポーツものの映画は慣れてるんでしょうね。日本でも劇場公開すべきだと思う。

「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」鑑賞


世間の評判通り楽しめる映画でしたよ。

ブラッド・バードが実写作品をどこまで手がけられるのかは未知数だったわけだが、アクションとコメディとの絶妙なバランスや、ラストの駐車場におけるファミコンのごときドタバタ劇をきちんと分かりやすく描いているあたりは「Mr. インクレディブル」に通じるものがあるなあと。このあと彼は実写映画でも引っ張りだこになるんじゃないだろうか。というわけで隠れた名作「アイアン・ジャイアント」を皆さん観ましょう。CGやスタントを使わなかったドバイの高層ホテルのシーンはやはり圧巻ですよ。ものすごく金のかかったジャッキー・チェン映画のような感じ。

多くの人が書いているように、ロマンス的な要素を排除してトム君のヤサ男イメージを削ったことや、チームの他のメンバーの活躍の場も増やしたことでトム君のエゴ映画という印象を減らしたことが功を奏しているのだろう。フランチャイズの主人公はジェレミー・レナーが引き継ぐという話もあるようだけど、この映画がヒットしてることや、レナーが他のフランチャイズを受けまくっている(アベンジャーズ、ジェイソン・ボーン)ことから、もう1回あたりトム君が主役を務めたりするような気がする。あとサイモン・ペッグが前作よりも活躍していて彼のファンとしては大満足。

アクションが洗練かつ充実している一方でストーリーが少し弱いのが欠点で、後半になると誰がどういう重要人物なのかが分かりにくくなってくるし、悪役が初老の「逃げ足が速い男」というのはどうかと。このシリーズは概して悪役が魅力的でないよね。でもJ・J・エイブラムス印の凡作だった前作よりもずっと楽しめる作品でしたよ。

ちなみにシリーズを通してだとジョン・ウーの職人芸的スローモーション(およびハト)が満喫できた2作目が俺はいちばん好きで、世間的にあの作品がよく叩かれてるのは納得いかんなあ。この4作目はそれと同じくらいの出来で、それよりずっと後ろにあるのが3作目、そしてフェルプス君を悪役にするという言語同断の行いをした1作目は唾棄すべき作品だと考えているんだが、皆さんはどうですか。

「アナザー・プラネット」鑑賞


原題はAnother Earth。あまり興味がなかったんだけど、いろんなところで今年のベスト映画の1つに選ばれていたので慌てて観てみた次第です。

ローダは天文学に興味を持つティーンの少女だったが、夜中に運転している際に「地球そっくりの惑星が接近している」というニュースを聞き、その惑星を眺めていたことで対向車に激突し、運転していたジョンという男性の妻子を死なせてしまう。このためローダは4年間服役し、出所後は大学に行くことも諦めて清掃員として働くことになる。そしてふとしたことからジョンの住所を知り、彼のところに謝りに行こうとするのだがどうしても伝えることができず、代わりに他人のふりをして彼の家へ清掃員として通いつめることになる。そのあいだに宙に浮かぶ「アース2」はますます地球に接近し、ついに科学者たちはそちらの住民たちとのファースト・コンタクトに成功。なんと彼らは地球の住民とまったく一緒であり、記憶や経験も共有している存在だということが判明する(要するにパラレルワールドみたいなもの)。これを知ったローダは、もう1人の自分に会いたいと思って「アース2」に行くことを決意するのだったが…というようなストーリー。

設定はSFっぽいものの内容は全然違って、ごく普通のドラマ仕立てになっている。あっちの世界にはもっと幸せな自分がいるのかな、と連想する女の子の物語といったところで、藤子・F・不二雄のSF短編みたいな感じ。派手な特殊効果などもなく、宇宙に思いを馳せながら淡々と話が語られるあたりはヘルツォークの「The Wild Blue Yonder」を少し連想させましたが、当然ながらあそこまで職人芸を感じさせる作品などではなく、ウジウジ悩む主人公と彼女を中心とする世界感は典型的なサンダンス映画ですね。こういうのをセカイ系って言うの?違う?

ブリット・マーリングという女優が演じる主人公の演技は結構いいし、全体的によく出来た佳作だとは思うものの、演出や音楽などで突出して良い部分があるわけではなく、小ぢんまりした映画だという感は否めないな。なんで批評家のあいだではあんなに評価が高いのかちょっと不思議な気もする。

「カウボーイ&エイリアン」鑑賞


エクステンディッド版を観たんだが当然どこがどう長くなってるのかは分からず。というかただでさえ抑揚のない映画がさらにダラダラとした展開になっていたような。

原作のコミックをまったく知らないことを踏まえたうえで言わせてもらうと、起承転結の「転」が抜けてるような作品。すべての映画に起承転結を求めるわけではないけれど、『エイリアンが来た=>身内がさらわれた=>エイリアンを追跡する=>彼らをやっつける』という展開は味気ないでしょ。エイリアンの意図などをもっと早い段階で明らかにして、それに対して主人公がどう戦うか、という流れにしたほうがよかったような気がする。おかげでエイリアンが人間を何のために捕獲してたのかとか、主人公のあの武器はなぜあそこにあったのかといった点がきちんと説明されてないんだよな。単に凶暴で怖いエイリアンというのは「ATTACK THE BLOCK」みたいなパニック映画でなら通用するかもしれないけど、こういう長尺の映画ならもっときちんと悪役を描くべきだろ。

あと気になったのが登場人物の多さで、彼らの描写に中途半端に時間を割いているものだから話が全体的に散漫になってしまってたな。アダム・ビーチのインディアンとか、サム・ロックウェルの医者にあそこまでキャラを立てる必要はなかったろうに。その一方で主人公は記憶喪失だし、ハリソン・フォード演じるオヤジはしかめ面してるだけでさほど活躍しないし、どうも主人公たちのキャラのほうが弱いのではないかと。

とはいえガタイのいいダニエル・クレイグには寡黙なカウボーイの役は(外見だけでも)ハマっていたな。一方でハリソン・フォードは実生活そのままのガンコオヤジを演じてるだけで、もうちょっと演技しようよ、といった感じ。「恋とニュースのつくり方」ではこの演技の幅の狭さをうまーく役にはめてたんだけどね。あとはポール・ダノとかウォルトン・ゴギンズとか出てるのにあまり見せ場がなくて勿体ないなあ。

その題材ゆえにコメディっぽくなると当初は考えられていて、製作側が必死にそれを否定した経歴のある映画だが、確かにもっと痛快な活劇っぽくしたほうが良かったかもしれない作品。