「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」鑑賞

まあ実は聖地ってあまり関係なかったりするのだが。好きなシリーズの最終章ということでちょっとドキドキしながら観ました。日本公開前なので感想をざっと:

  • 舞台は前作の1年後。部族の長となったヒックが、ドラゴンを狙う人間たちの侵攻をいかに退けるかがテーマになっていて、悪い人間VSヒックたち、という構図は前作に似ているかな。ヒックが青年になっていることもあり、よりシリアスな内容になっているのも特徴。
  • その一方ではポスターにあるようにトゥースレスの相方みたいなドラゴンも登場しまして、その馴れ合いのシーンが第1作のヒックとトゥースレスの湖畔(だっけ)のシーンに通じるところもあって、うまく過去作を反映させているなと。
  • 悪い人間側には、前作以上に狡猾なハンターが出てきてトゥースレスを狙ったりするのだが、変にヌケたところもなく、かなり知的なヴィランであったのが話に緊迫感を与えて良かったですよ。ボウガン強すぎだろ、と思ったけど。
  • 部族とドラゴンたちの安全を模索するヒックの苦悩が大きく扱われているものの、リーダーの割には事前準備(偵察)とかしないで物事を実行に移していたような?賢いお母さんの言うことをもっと聞きなさい!
  • 主題歌は前2作に続いてもちろんシガーロスのヨンシー。どことなく平凡な曲だったのが残念だけど。
  • 前作同様、第1作を傑作たらしめていたボーイミーツガール(&ビースト)要素がなくなっているので瑞々しさに欠けることは否めないのだけど、その一方で3作にわたってキャラクターが成長し、最後に大団円を迎えるところはさすがにウルっときてしまったよ。
  • 本国でもそれぞれ配給会社が変わり、日本では前作が劇場公開されない憂き目にあったシリーズだが、ピクサー作品に匹敵する出来のシリーズでありますので、まだ観てないかたはぜひ観てみてください。

機内で観た映画2019 その3

こないだ何故かサウジアラビアまで行ってきたので、機内で観た映画の感想をざっと。

  • 「THE ART OF SELF-DEFENSE」: 路上で暴漢に襲われたことがきっかけで空手道場に通い始める男性をジェシー・アイゼンバーグが演じるダークなコメディ。道場が健全なようでそうでもないことが明らかになるのだが、マッチョの思想にとらわれて道場の師範の言いなりになる描写が「ファイト・クラブ」に通じるものがあるな。しかし1番ヤバい人物はアイゼンバーグだったというわけで、神経質なタイプを演じさせたら巧い彼の才能が100%活かされた作品ではないでしょうか。個人的には今年ベスト級の出来だった。
  • 「STAN & OLLIE」: 邦題は「僕たちのラストステージ」。まあローレル&ハーディの知名度が低い日本だとこういう邦題になるのかな。晩年の彼らを扱った内容のため、コメディアンが主人公ながらもダウナー系の出来になっているのはいかがなものか。なおむかしコミックの「プリーチャー」で語られていた「ローレル&ハーディが船でアイルランドに着いたとき、教会の鐘が彼らのテーマ曲を鳴らして迎えた」というシーンがあった。これウィキペディアにも載ってる有名な逸話らしいが、昔は真偽のほどが分からなかったのだよ。
  • 「MISSING LINK」: みんな大好きライカ作品。人に敬遠されるクリーチャーが主人公、という点では「ボックストロールズ」に似てるかな。アニメーションの出来は相変わらず素晴らしいし、ヒュー・ジャックマンのキャラクターとかも良いのだけど、「クボ」とかに比べると脚本が凡庸なような。英語のダジャレが多いので訳すとき大変そうだな。本国では興行成績が散々だったようで、これがライカ最後の作品になったりしないかちょっと心配。
  • 「クロール 凶暴領域」:これ似たような映画なかったっけ?水没した店でサメに襲われるやつ?地下室から抜け出して救出ヘリが見えたとき、そこで屋上に登って発煙筒焚けばいいと思ったのに、父娘がボートを取りにいこうとするのでイライラしてしまった。
  • 「SWORD OF TRUST」: ちょっといい評価を目にしていたインディペンデント映画。南北戦争で実は南部が勝利した証拠だという剣を売りつけようとするカップルと質屋の店長の物語。場面転換もそんなにない会話劇だが、店長を演じるのがマーク・マロンで、個人的に彼の演技が好きなので飽きずに観れた。別れた元妻(監督のリン・シェルトンが演じる)のことをしんみり語る姿とかがね、哀愁があっていいのよ。もっと陰謀論ネタに絡んでも良かった気がするが、面白い小品でした。音楽もマロンが担当していてね、全編にわたってブルージーなギターが聴けるよ。

ちなみにサウジは思ったよりずっと開放的なところで、英語もそこそこ通じるし人々も親切で、面白いところでした。まだ観光地として開かれていないので観光するようなところもないし、移動がタクシー頼みになってしまいますが、まあ脱オイルマネーを目指しているとのことで、これからもっと外国人にオープンになっていくんじゃないですか。

「ターミネーター:ニュー・フェイト」鑑賞

なぜ原題は「ダーク・フェイト」なのに邦題は「ニュー・フェイト」なのか。まあいいや。感想をざっと書きますが、以下はネタバレがいろいろ含まれてます:

  • マッケンジー・デイビスは正義。これは最初に言っておく。
  • 冒頭から「T3」を全否定するような展開で、あーそこからやり直すのね、という感じ。
  • しかしその後の話はいつものパターンで、未来からターミネーターがやってきて、それをやっつけるために戦うというだけ。6作目ともなると流石に飽きてきますよ。
  • 前も書いたように個人的には「T1」原理主義者なので未来がコロコロ変わるのは感心しないのですが、今回はかなりご都合主義的で、「スカイネットが阻止された→新たな敵が現れた」「ジョン・コナーがいない→別のリーダーが登場する」というゴールポストを動かすようなものでは、サラ・コナーたちが戦ってる意味がないと思うんだけどね。「ターミネーター」シリーズがいかにマンネリ化しているのかを実感させられた2時間だった。
  • いや今回はジェームズ・キャメロンのもとに権利が戻ってきたとかで、密かには期待してたんですよ。それなりに新しい方向性を打ち出すんじゃないかと。そしたら過去の蒸し返しになっていたのが残念。シュワとリンダ・ハミルトンが出ているのは良いのだけど、肝心のストーリーがねえ。
  • やけにメキシコの移民問題に焦点を当てているのはキャメロンの趣味だろうか。でも実際の流れはデビッド・S・ゴイヤー風味で、あまり奥の深いものではなかったな。珍しく飛行戦なども出てきたけど、夜間のアクションシーンは見づらかったぞ。監督のティム・ミラーは「デッドプール」ではスタイリスティックなアクションが演出できたのに、これくらいの大作になるとちょっと経験不足なんだろうか。
  • ターミネーター作品としての要素はしっかり入っているものの、6作目にしてそんなベーシックなストーリーテリングをして誰が喜ぶのか、ということになると思う。
  • スタジオはこれをもってフランチャイズを再起動させたかったのだろうけど、逆に作品の限界を感じてしまう内容であった。もうこれにて「ターミネーター」シリーズは打ち止めにするのが皆のためだと思う。

機内で観た映画2019 その2

こないだヨーロッパに出張に行ってきたので、機内で観た映画の感想をざっくりと:

  • 「トイ・ストーリー4」:野良アプリならぬ野良トイ、というか浪人トイがテーマになった今回、前半のフォーキーのアイデンティティ・クライシスの話と後半のアクション主体の部分がうまく噛み合ってないような?前作よりは面白かったけど、もうこれ以上続編作るのは難しいだろうなあ。ウッディとバズの声優の格差を反映してか、殆どウッディの話になってましたね。
  • 「イエスタディ」:ビートルズのいない世界ではラットルズが王になるのでは、と思ったけどオアシスもいないようなので、彼らも存在しないのでしょう。リチャード・カーティスの脚本にダニー・ボイルの映像が加わった王道の出来なので、細かいこと考えずに観れば十分楽しめる作品じゃないですかね。字幕で「cider」を「ソーダ」と訳してたのは気になったが。
  • 「ジョン・ウィック:パラベラム」:アクションはスタイリッシュですごいと思うのですが、いかんせんストーリーが単調というか何というか。主人公が遠方まではるばる旅をした意味はあったんかい?続編もしっかり作られる予定みたいですが、もういいよお。
  • 「BOOKSMART」:機内上映版は10分くらいカットされてる…?オリヴィア・ワイルドが監督に挑んだ作品で、手堅い演出もいいが脚本(執筆はワイルドでない)が非常に素晴らしい。ガリ勉の少女ふたりがパーティーに繰り出すという、よくある青春映画かな…と思いきや前半はコメディ要素が強く、「コミ・カレ!」みたい。青春映画のステレオタイプが揃ってそうで、そうでもなく、ティーンの儚さなどもうまく盛り込んだよく出来た作品。これは面白かった。
  • 「STUBER」:クメール・ナンジアーニとデイブ・バウティスタに加えて、イコ・ウワイスとかカレン・ギランとかナタリー・モラレスとかいい役者使ってるのに、まあ内容はFOX定番のB級コメディ。イコ・ウワイスの完全な無駄遣いですな。FOXは頑張ってこういう作品を引き続き製作して、ディズニーの株価の下落に貢献すべきだろう。

「ジョーカー」鑑賞

まだ公開したばかりなので感想をざっと。以下はネタバレ注意。

  • 話がどこにたどり着くのかは最初から分かってしまっているので、ストーリー自体に驚きなどはない。ホアキン・フェニックス演じる主人公の変化の過程を楽しむ作品かと。
  • 「タクシー・ドライバー」や「キング・オブ・コメディ」そといったスコセッシ作品のパスティーシュと呼ばれ、確かに70年代感を強く出している一方で、内容は非常に現代的というか、貧富の格差とかインセル問題といった現代社会にはびこる欲求不満をうまく反映させていた。観てる最中に香港でのデモやアノニマスのことを連想した人は多いはず。
  • 音楽はゲイリー・グリッターの「Rock And Roll (Part 2)」といえば野球の試合とかでの定番曲だったかと思うが、グリッターが児童ポルノで捕まってからは、この映画のように「悪人のテーマ」として使われるようになってしまいましたね。
  • ゴッサム・シティの風俗街では「Ace In The Hole」というポルノ映画をやっているらしく、「Zorro The Gay Blade」もタイトルからてっきりそっち系の映画だと思って、ウェイン家は子連れでそんな映画を観てるのか?と驚きましたが、れっきとした80年代のゾロ映画だったのですね。
  • ボブ・ケインとビル・フィンガーに加えて、ジェリー・ロビンソンがジョーカーのクリエイターとしてクレジットされたのは初かな?
  • コミック作家のクレジットにブライアン・ボランドが載っているけどアラン・ムーアはいない。まあまたムーアが断ったんだろう。
  • ブライアン・タイリー・ヘンリーは最近いろんなところで見かけるな。彼よりも上位にクレジットされているマーク・マロンは3分くらいしか出演してなかったぞ。
  • ホアキン・フェニックスの演技は凄かったものの、やはりジョーカーというのは対になるバットマンがいてこそ映えるキャラクターなので、そういう意味では個人的にはヒース・レジャーのほうが「らしい」ジョーカーだったと思うのです。